広島・安芸高田市長選、7月7日投開票…子育て支援や産業振興など残される課題
広島県安芸高田市長選は30日、告示される。石丸伸二前市長が、動画投稿サイト「ユーチューブ」やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)での情報発信を強めた同市は、全国的な注目を集め、ふるさと納税の増加につながった。石丸氏が都知事選に立候補するため退任し、早まった市長選挙。議会の反発を招いて計画通りに進まなかった子育て支援や産業振興策などの課題が残されており、市政の今後の方向性をうかがう選挙となる。
議会や市長会見をユーチューブで中継し注目
同市では、市議会や市長の記者会見をユーチューブで中継している。前市長が市議らを批判する言動が注目を集め、市の公式チャンネル登録者数は26万人を超えた。2023年9月からは広告収入などを得られるようにし、収益は1500万円以上という。 注目を集めた効果は市へのふるさと納税額にも影響した。20~22年度の納税額は2億円前後だったが、23年度には約4億4500万円となり、一気に2・2倍まで膨らんだ。 市は、これらで生まれた財源を使い、23年度途中から3年計画で、全小学校の机と椅子約1000組の更新を進めている。机は天板が一回り大きく、タブレット端末を置くスペースが確保できるものとし、事業費は計約5000万円。 返礼品には市特産の鶏肉や米があり、市内約75の企業・団体が納品。利用者からも好評で、事業者も「まったく接点のなかった人たちに商品を届けられる」と歓迎し、産業振興にも一役買っているという。
議会との関係は…「丁寧な説明が必要」
一方で、議会との対立により、市政が停滞したと映るケースもある。 経済振興策として執行部が打ち出した生活雑貨「無印良品」の店舗を「道の駅三矢の里あきたかた」に誘致する事業。運営する良品計画(本社・東京都)とは23年4月、連携協定を結び、地場産品を使った特産品の開発や店舗網での販路拡大など6項目を取り決めた。 市は、専決処分で店舗改修の調査設計を進めたが、6月定例議会で「専決処分ではなく、臨時議会を開くべきだ」「計画の事前説明がなかった」などの意見が上がり、専決処分は不承認とされた。同議会には改修工事費約3300万円を盛り込んだ補正予算案も提案したが、議会側は工事費を削除する修正案を出して可決。出店計画は頓挫した。 吉田保育所など、老朽化した幼稚園や保育所3施設を統合し、認定こども園を整備する計画も「保護者や地域住民への説明が不足」といった理由で23年度当初予算案から基本構想作成費が削除され、開園の見通しは立っていない。 議会と執行部の対立は、前市長が議員を批判したSNSへの書き込みから激化した。市議の一人は「(前市長は)SNSも大事だが、市民にもっと丁寧な説明が必要だった」と話す。一方で「議会側が対話を拒んだ面もあり、責任がある」と、議員らに苦言を呈する市民もいる。 市長のリーダーシップと市民の代表でつくる議会の関係。民主主義の両輪をどう回すか。その手法を、市民が見定める選挙となりそうだ。(元永達夫)
新人3人が立候補を表明
市長選には、これまでに新人3人がいずれも無所属での立候補を表明している。投開票は7月7日。