「100万が2回振り込まれてた」auカブコム証券の誤入金、返金しないと税金がかかる?
7月2日、auカブコム証券の証券口座から出金依頼に基づく銀行口座への振り込みにおいて、一部の顧客で二重に振り込まれる事象が発生した。 トラブル発生当時、SNSには「カブコムから1.6億出金したと思ったら、いつのまにか3.2億振り込まれていた」「たまたまほっとんど動かさないカブコムから100万出金したら、噂通り本当に100万が2回振り込まれてたー」などという投稿が相次いだ。 一部報道によると、auカブコム証券が超過して振り込んだ金額は総額40億円強で、件数は5000件に上るという。そのうち98%はauカブコム証券へと返金され、未返金分約8000万円に関しても、引き続き返金を依頼していくという。 もし二重振込された人が超過分の返金に応じず、そのまま自分の懐に納めた場合、その収入には税金はかからないのだろうか。税理士と弁護士の両資格を持つ菊地正志氏に聞いた。 ●超過分は不当利得とみなされ、課税の対象となる ーー利用者の銀行に入金されたお金のうち、自身のお金でない超過分について、本来はauカブコム証券へ返金する必要があると思いますが、もし返金しなかった場合、超過分について課税の対象となるのでしょうか? 「超過分について返金しなかった場合、『法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼしたこと』になりますので、その金額は民法703条の『不当利得』と評価され、課税対象になると考えられます」 ーー課税の対象となる場合、どんな税金がどれくらいかかるのでしょうか? 「この場合の不当利得は『一時所得』に分類され所得税がかかります。一時所得の所得額は次のように計算されます。 ・一時所得の金額=受け取った金額ー特別控除額(最高50万円) ・所得に算入する金額=一時所得の金額の1/2 例として、超過分が1000万円であったとすると、特別控除額50万円を引いた一時所得は950万円になります。この1/2は475万円となり、他に所得がないと仮定すると、そこから基礎控除48万円を引いた427万円が最終的な課税金額となります。この場合の税額の計算は以下のとおりです。 ・税額=427万円✕税率20%ー控除額42万7500円=42万6500円」 ●誤入金で得た利息は、受領者が善意の場合は返還の義務はないが・・・ ーーauカブコム証券へ返金したとして、返金までの間に銀行口座の普通預金で利息が発生するかと思います。その利息分についても返還する義務があるのでしょうか? 「この利息に関しては、民法第189条が適用され、同条は『受領者が善意の場合には利息を返還する義務がない』と定めています。 ただし、過誤入金と知りつつ受け取った場合は悪意とされ、本来は利息も含めて返還する義務があります。この場合、利息は不当利得として、利息そのものが課税対象となると考えられます。 間違って入金されたお金を使って得をしようとすると、法的にも税務的にもトラブルになる可能性が高いです。速やかに返金することが最善です」 【取材協力税理士】 江戸川葛西税理士事務所 菊地 正志(きくち まさし) 税理士 弁護士、公認会計士準会員、宅地建物取引士。その豊富な知識と経験を駆使して、クライアントの多様なニーズに対応。税務申告ができる弁護士は希少な存在であり、企業の税務及び法務における専門的なサポートを強みとしている。 江戸川葛西相続法律事務所:https://ek-law.jp/ ※税理士事務所HPは準備中
弁護士ドットコムニュース編集部