佐賀東が慌てずポジショニングで優位に立って3発逆転勝ち。選手権で前回大会の8強超えに挑戦
[11.10 選手権佐賀県予選決勝 佐賀東高 3-1 龍谷高 駅前スタ] 前回大会の8強超えへ、まずは佐賀制覇。第103回全国高校サッカー選手権佐賀県予選決勝が10日、鳥栖市の駅前不動産スタジアムで行われ、前回全国8強の佐賀東高と龍谷高が激突。佐賀東が3-1で勝ち、2年連続14回目の優勝を飾った。 【写真】「全然違う」「びびるくらいに…」久保建英の9年前と現在の比較写真に反響 佐賀東は、前回大会の経験者を半数残す陣容。九州新人戦で4位に入っているが、インターハイ予選は準決勝で敗れている。決勝の先発はGKが中里好佑(3年)、4バックは右から田中佑磨主将(3年、U-17日本高校選抜候補)、後藤光輝(3年)、甲斐桜助(3年)、江頭瀬南(3年、U-17日本高校選抜候補)、中盤は中村琥道(3年)と甲斐巧海(3年)のダブルボランチで右SH大島弘賀(3年)、左SH江口賢伸(3年)、2トップを石川僚祐(2年)と三原拓実(2年)が務めた。 一方、夏の九州大会で2位、インターハイ予選に続く2冠を狙う龍谷の先発は、GKがゲーム主将の原田浩斗(3年)で、早川暖人(3年)、光安佑斗(3年)、松村玄将(2年)の3バック。ダブルボランチが伊賀遥生(2年)と大城侑昊(3年)、右WB 江原大翔(3年)、左WB中村太朗主将(3年)、2シャドーが井上叶翔(2年)と野口大翔(3年)、最前線に一ノ瀬利穏(2年)が入った。 佐賀東は5分に大島が左足シュートを放つが、直後に龍谷が先制点を奪う。野口の左足シュートはブロックされたものの、早川が素早く奪い返し、井上が右へさばく。そして、江原の右クロスを一ノ瀬が相手GK、DFの前で合わせてリードを奪った。 佐賀東は今大会初めてリードされる展開となったが、蒲原晶昭監督は「失点してもちゃんとできるっていうことは言ってたんで、全然選手も慌ててなかったじゃないですか」と語り、主将の田中佑も「最初に失点してしまうっていうケースのも考えた上でこの試合に挑んできたので、最初ああいう形で隙あって失点してしまったんですけど、メンタルの部分で自分たちもコントロールできていたので、そこまで焦らずにやりました」と振り返る。 7分にCKのこぼれを拾った江口が、DFをかわして左足ミドル。14分には甲斐巧の右アーリークロスのこぼれ球を三原が右足で狙う。これはGK原田に阻まれたが、直後にも江頭の鋭い左クロスがゴール前に入った。 そして、左右へボールを動かしながら攻める佐賀東は18分、左の江頭から斜めのパスが石川に入る。石川が粘ってこぼれたボールを甲斐巧が左足で決め、同点に追いついた。 龍谷は21分、自陣左タッチライン際でボールを奪った中村がドリブルで2人をかわして持ち上がり、右足を振り抜く。DFに当たってコースの変わったボールは右ポストをヒット。また、伊賀や大城がセカンドボールを拾って仕掛けに繋げる。 この日、龍谷は攻め勝つことを掲げて立ち上がりからハイラインで勝負。だが、太田恵介監督が「立ち位置が低かった。もっと積極的にやったほうがオレらのサッカーができたと思う」と指摘したように、徐々に重心が重くなってしまう。相手のビルドアップのキーマン・中村琥を意識するがあまり、守りで後手に。ポジショニングの質が高い相手にサイドから押し込まれ、自陣ゴール前のシーンが増えた。 早川、光安、松村の3バックを中心に守っていたが、33分、佐賀東が勝ち越し点を奪った。自陣からロングボール。これは通らなかったものの、切り替え速く石川と江口の2人で奪い返す。そして、右横へ繫ぎ、三原が右足を振り抜く。これがゴール左隅に決まり、逆転した。 ポジショニングで優位に立って試合をひっくり返した佐賀東・蒲原監督は「ああいうポジショニングでとかっていうのは、もうずっとやっています。そこからどう背後をついて点に繋げるかっていうのがずっとテーマだったもんですから。早い段階で同点になって、逆転してっていうのは良かったですね」と評価した。 40+1分には、蒲原監督が「あれが1番もう理想とするやり方なんですよ。あれが1番ナイスプレー」という攻撃。左サイドでボールを動かすと、左中間で受けた中村琥が右前方の甲斐巧へパスを通す。そして、甲斐巧がすぐさま左前方へラストパス。これを受けた石川がマークを外して右足を振り抜いた。 これは龍谷GK原田の好守に阻まれたものの、佐賀東は後半7分に追加点を奪う。蒲原監督がこの日のプレーを高評価していた石川を起点とした攻撃。大島が三原とのワンツーで中央へ動かすと、江頭がグラウンダーの左足ミドルを放つ。これが右ポストを叩いてゴールラインを越えた。 田中は「回しの面で相手のファースト(DF)に対して順応して、相手のファーストを走らせたりできたので、そこでビルドアップの面で優位性を持てた」と振り返り、「切り替えの部分で奪ってゴールと、いい繫ぎからのゴールっていう自分たちのサッカーの得点だった」と頷いた。 龍谷は11分にMF松田俐生(2年)、15分にはDF恵本慶人(3年)を投入。佐賀東は田中佑と江頭の両SBの正確なミドルパスも活用しながら、三原や江口、石川のクロスやシュートから追加点のチャンスを作るが、終盤は相手に主導権を握られる展開となった。 29分にMF横溝玲星(3年)を加えた龍谷は、試合を通して相手の脅威になっていた一ノ瀬や松田俐の推進力のあるドリブルや中村、野口の個人技などで相手にプレッシャーをかける。佐賀東は押し込まれる展開となったが、甲斐桜が高さを発揮。また、前半から好守を見せていた後藤が前に出て止め切る。佐賀東は安定感の高いGK中里と4バックが昨年と同じメンバー。経験値の高いDF陣が落ち着いて対応していた。 34分にはセットプレーの流れから、決定的なシュートを打たれたが、田中佑がゴールライン上でクリア。その佐賀東は26分のMF根岸佑真(3年)に続き、MF森田偉斗(3年)、MF中村友(2年)、DF田中幹大(3年)を投入。3-1のまま80分間で勝ち切った。 佐賀東は期待されたインターハイで予選敗退。だが、蒲原監督は「いい意味で言ったんですよ。『この負けがあって良かったねって思えるために、今頑張らんとしょうがない』と」と説明する。自力をつけてきたチームはこの日、焦らずに逆転勝ち。田中佑は「あの負けがやっぱり自分たちのメンタルを大きく変えて火がついたっていうか、ほんとに『もう選手権しかないぞ』っていう、迫られた状況の中で、こうやって逆転っていう形で、やっぱり大きな成長だと思う」と成長を実感していた。 選手権へ向けて田中佑は、「相手を見ながらそれに順応して攻撃を積み重ねていくっていう厚みのある攻撃で、守備も前提にしながらやっていきたいと思ってます」。この日の後半は上手くいかない時間も多かっただけに、どんな時も自分たちのサッカーができるようにトレーニング。そして、目標の昨年超え、全国ベスト4以上を実現する。