「いらっしゃいませ」が聞こえない店 “表情”と“身ぶり手ぶり”の接客で人気を集める「サイニングストア」 客は「幸せな気分になれた」と笑顔に スタッフの多くは聴覚障害者
玉木さんに店を任せると決めた「ココトモファーム」の齋藤社長も、このように話します。 ココトモファーム 齋藤秀一社長: 「最初はサイニングストアが本当にうまくいくか不安はあって、小さな催事からやったんですけど、すごく人気で普通のお店よりも売り上げが高いくらい」
きっかけは、玉木さんからの「働きたい」という直談判でした。 障害があると職業選択の幅が狭く、特に販売など人と話す仕事につくのは難しいのが現状です。アルバイトの伊藤さんも、前職は就労継続支援A型事業所でラムネなどの製造を行っていました。現在は「接客の仕事はドキドキするけど楽しい!」と、人とつながる仕事にやりがいを感じているようです。
周りの理解や配慮があれば、障害があっても人と関わる仕事ができる。そう信じて働く玉木さんたちの姿は、店を訪れた人にも刺激をもたらしているようです。 カフェを開くのが夢だという難聴の男性は、「こういうお店で働いているのを見て、自分もやれるかもと思った」と笑顔を見せました。手話を知らないお客さんが、スタッフと積極的にコミュニケーションをとる様子も、あちこちで見られます。 サイニングストアが与える影響について齋藤社長は「新しいコミュニケーションをしながら商品を購入するという、新しい価値が生まれている」と分析します。
社長に直談判して、新たな可能性を切り開いた玉木さん。すでに次の目標を見据えていました。 店を運営する玉木浩人さん(60): 「全国に広げていくことです。ろう者で運営できる店をどんどんつくっていきたい。次の世代に引き継いでいきたい。それが夢です」 サイニングストアと聞くと、手話がわからない人は身構えてしまうかもしれませんが、玉木さんたちの温かい接客は、そんな不安な気持ちを吹き飛ばしてくれます。訪れた人を笑顔にするサイニングストアで、新しいコミュニケーションを体験してみてはいかがでしょうか。