FRB利下げ観測 次の日銀会合で金融緩和策は修正か
20日まで開かれた日銀の金融政策決定会合では、長期金利の誘導目標を「ゼロ%程度」とするなどの大規模な金融緩和政策の「現状維持」を決定しました。米連邦制度準備理事会(FRB)による利下げ観測がある中で、今後の緩和策はどうなるのか。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【中継録画】日銀・黒田総裁が決定会合後に定例会見(2019年6月20日)
今回の決定会合では「現状維持」
6月19、20日に開催された日銀の金融政策決定会合では、大方の予想通り金融政策の現状維持が決定されました。事前の予想(含む筆者)では、FRBが18、19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でサプライズ利下げに踏み切った場合、日銀も何らかの緩和策を打つとの見方がありましたが、FRBが現状維持を選択したため、日銀が動く理由はなくなりました。したがって、今回の決定に意外感はありません。 日銀は景気の現状判断も据え置きました。「輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している」という前回(4月25日)の判断をそのまま示しました。前回の金融政策会合以降に得られたデータは、輸出と消費者マインドが悪化し、生産もやや弱めでしたが、その反面、消費が底堅く、全体としてみれば、大きな変化はありませんでした。物価の先行き見通しも「マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続ける下(中略)2%に向けて徐々に上昇率を高めていく」という基本見解が維持されました。
予想される「政策指針」の変更
もっとも、FRBの利下げが予想される7月の金融政策決定会合では、現行の緩和策が修正される可能性が高いと予想されます。日銀はマイナス金利、国債買入れ、株式購入など、さまざまな金融緩和策を導入していますが、変更が予想されるのはフォワードガイダンスと呼ばれる「政策指針」の表現変更です。 現在の「当分の間、少なくとも2020 年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」という表現を「当分の間、少なくとも2020年末まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」と書き換えると予想されます。フォワードガイダンスの変更は、残り少ない緩和手段のうち、最も副作用が小さく、ハードルが低い選択肢ですから、緩和競争で他国の中央銀行に遅れを取りたくない日銀が真っ先に手を付けると考えられます。足もとではFRBの利下げが広く予想されているほか、欧州中央銀行(ECB)も更なる金融緩和を講じる構えがあることを示していますから、こうした中で日銀が何もしなければ、「無策」のレッテルを貼られる恐れがあります。たとえ、望まれる政策効果が小さくても何らかのアクションを起こす必要があるわけです。 一方、マイナス金利拡大など、市場の混乱を引き起こすリスクのある政策の採用は見送られるでしょう(その他では日本版TLTROと呼ばれる策の導入も予想されていますが、仕組みが複雑なので本稿では言及しません)。日銀は2016年1月、起死回生を狙って突如マイナス金利を導入したものの、市場の混乱を増幅してまったという苦い経験があります。
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