「ふてほど」の後ではキツい…NHK「新プロジェクトX」の昭和的すぎる“美談”
昭和的な“美談”
「ふてほど」は、体育教師の小川市郎(阿部サダヲ)が昭和から令和にタイムスリップし「不適切」な言動を反省、価値観をアップデートする物語だ。最終回で令和から昭和に戻った市郎が、教頭が呼びかけた飲み会に参加する場面があった。不登校の生徒に悩む教師に、教頭は「時には愛のムチも必要だ。ライオンが子を崖から突き落とす厳しさが…。コミュニケーションが不足してる。もっと腹を割って話し合ってさ。縦のつながり横のつながりを大事に…」と説教する。それを横で見た市郎は「気持ち悪い」とつぶやく。令和の感覚にアップデートした市郎にしてみれば、教頭の“飲み会”は同調圧力で参加させられる、違和感だらけのイベントだったのだ。 初回の「新プロジェクトX」では、まさに似た構図があった。スカイツリーの建設で鉄骨を組み立てる「とび」の仕事には、3つ会社のチームが投入され、互いに競い合っていた。作業が遅い社のリーダーの男性には、早い社から「いつまでチンタラやっているんだ!」と容赦なく怒号が飛び、関係が険悪だったという。 ところが、ある日、関係の悪い各社のとび職人たちがあつまり、一緒に花見をすることになった。遅い社のリーダーは、酒を飲むうちに度胸がつき、思いきって他社の“ライバル”に話しかけてみた。そこで少しコツを教えてもらい、得た情報を自分のチームに持ち帰り研究を重ねた。結果、すべてのチームの息が合うようになったという。 対立していたリーダーたちがスタジオに出演し、当時を振り返っていたが、件の花見でも、当初は会社ごとに別々に座っていたという。次第に酔いが回ってからは「同じことやっている同じ仲間だよね」「いいものを建てようとしている思いは一緒」と打ち解けたという。 会社が違うとび職人のリーダーたちは、互いに冗談を言いながら仲がいい様子を見せていた。ドキュメンタリーだから、事実なのだろう。酒の席で酔って互いに仲良くなって難工事を実現させるためにライバル同士力を合わせる……美談であることを否定はしない。だが、“飲みニケーション”が威力を発揮するというのは「昭和的な仕事のつき合い」の典型である。番組ではプロジェクトの成功の鍵を握ったポイントとして強調されていたが、果たしてこれを素直に「良し」と、現代の視聴者は受け入れられるだろうか。