女性が活躍している、スウェーデンと米国の保育園事情はどうなっているの?
市場原理の国、米国は「保育園に国家は介入せず」
一方、市場原理の国、米国でも働く母親の有業率は比較的高い。米国の保育はプライベートの問題とみなされており、国家は介入せず、保育サービスは市場によって供給されている。従って、政府による民間保育園への補助金は支給されていない。営利目的で活動が行われる民間保育園の保育料は高額で、しかも保育の質も確保が難しい。保育士の賃金は低く、保育士の離職率も高い。 米国の大都市圏の郊外には、白人中間層を主なターゲットとした、全米にチェーン展開する営利目的の保育園が立地している。沿道沿いに駐車場が広く確保された保育園が立地し、建物の脇に高い柵で囲まれた園庭はかなり狭い (※注3)。民間保育園の高額な保育料を負担できない貧困世帯、特に主に片親世帯には、州政府が所得に応じて保育バウチャーという形態で保育料の補助金を支給している。インナーシティの貧困層が居住する地域には、教会などの非営利団体の保育園が立地している。低所得世帯の母親を主な対象として、家庭保育所を開設する資格を得るための研修も行われている。 ただし、米国の働く母親の保育園の利用率はそれほど高くなく、それ以外の形態の保育サービスも利用されている。たとえば、所得の高い世帯では、ナニーと呼ばれる住み込みのベビーシッター(メキシコの移民などが低賃金で働く)を利用する。一方、低所得の働く母親は、友人、知人などに安い料金で預けることも多い。彼女らは自宅で自分の子どもを育てながら、知り合いの子どもを預かる(※注4) 。 また、(主にブルーカラーの)夫婦間で1日24時間の労働時間のシフトを調整して、子どもを預けずに子育てしている夫婦もいる。また、米国の労働市場は流動的なので、子育てのために労働市場から一時的に退出しても、資格や経験があれば、それなりの職を再び得ることが可能である。このように、市場原理の国、米国では、階層間で保育の対処は違って多様であるが、女性の就業が大きく阻まれることはない。 (※注3)そのような民間保育園は学童保育も同時に実施しており、保育園のスクールバスが、朝夕、小学校への送迎を行っている。米国の公立小学校には通常、学童保育も併設されているが、夏休みや休日は休みであったりするので、働く母親にはやや使い勝手は悪いからである。