「チョイ乗り」需要は長期低落業界を救うか 都心タクシー初乗り1km410円に
東京都23区および武蔵野市、三鷹市のタクシー運賃が30日、これまでの初乗り2.0km730円から同1.052km410円に変更されました。通院や買い物など短距離の移動に利用する「チョイ乗り」需要の喚起によって、需要の長期低落傾向に歯止めをかけたいというのがタクシー業界の狙いですが、ここに至るまで業界内では異論もあったようです。
「都民へのインパクトも大きいと期待している。ぜひ、通院や買い物の足、子持ち世代の足としてタクシーをご利用いただければ」と、27日の記者会見で、タクシー業界団体である東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長(日本交通会長)は訴えました。 業界側は、運賃の変更による「チョイ乗り」需要に期待するとともに、海外より高いとされる初乗り運賃を下げて、訪日外国人にリーズナブルさをアピールしたい考えです。運賃変更の背景には、長期低落傾向にあるタクシー需要への危機感があり、タクシーを使いやすくして、なんとか需要を増加させたいとの思いがあります。 今回の運賃変更では、初乗り運賃と距離を引き下げるとともに、初乗り距離が過ぎた後に加算される運賃は、従来の280mごとに90円(時速10km以下の場合は105秒ごとに90円)から、237mごとに80円(同90秒ごとに80円)と、加算される間隔を縮めました。
これにより、約2kmまでの運賃はこれまでよりも低くなりますが、約2kmから約6.5kmまではほぼ変わらず、約6.5km以上になると高くなります。短距離利用客からの運賃収入の減収を、中長距離利用客の運賃を引き上げてカバーし、業界全体として運賃収入がプラスマイナスゼロにしています。同協会で過去の運送データをもとにシミュレーションした結果、今回の運賃の形が生まれました。今回の変更を、業界では「運賃の値下げ」と言わず「運賃の組み替え」と称しています。 値下げでもあり、値上げでもある「運賃組み替え」が生まれたのはなぜか。タクシー業界誌の編集長(49)によると、2~3年前に初乗り距離短縮の話が浮上した時は、事後運賃はそのままで初乗り運賃だけを下げるという案でした。 これに対し、比較的短距離の利用客が多いタクシー事業者やタクシー乗務員は「減収になる」などと猛反発。協会内で検討を重ねた結果、今回の形に落ち着きました。短距離客の多いタクシー事業者はそれでも減収になる公算が大きいですが、初乗り運賃を下げて需要を喚起しようという業界全体の流れのなか、承知したようです。