週刊誌連載2本で慢心した大藪春彦賞作家がハマった「落とし穴」…そして作家は当てもなく階段を昇り続ける【「鶯谷」第十九話#2】
前編記事【いつの間に複数のことが考えられなくなった大藪春彦賞作家…それでも頭に文章が浮かんでくる小説家としての癖(へき)】より続く。 【写真】大胆な水着姿に全米騒然…トランプ前大統領の「娘の美貌」がヤバすぎる!
作家の慢心
今にして思えば、私がこれほど四苦八苦しているのは単純に出版不況の波に吞まれたからだけではなく、もうひとつの要因が考えられる。 一昨年、1年間の週刊誌連載を2本抱えた。 そのため、その期間は他の作品を発表できずにいた。 しかもその翌年の1年間は、当該作品うちの1作の全面改稿に費やした。 すなわち都合2年間は、ろくに新作を発表できないまま過ごしたのだ。 さらにあろうことか、慢心していた私は、連載終了時に時間をおかず単行本として出版して下さった版元の担当さんに、作品が気に入らないと文庫化を断ったのである。 その版元さん、そして担当さんとの関係が、取り返しのつかないほど悪化したのはいうまでもない。 あえて言い訳をするなら、週刊誌連載をしていた1年間の収入は、会社経営をしていたころを上回るほどで、それで慢心したのだ。 しかし落とし穴があった。 税金だ。 連載を終えた翌年の税金は、目玉が飛び出るほどの額だった。 もちろんそれを支払えるだけの収入があったのだから、備えておけば問題はなかったのだろうが、それを怠り散財しまくった。
「分かっていますか?」
税金だけではない。 国民健康保険料も最高額まであがった。 隔月の支払額が8万円を超え、その支払いにも四苦八苦した。 改稿に改稿を重ねた、作品の売れ行きも芳しくなかった。 「踊り場の作家」という言葉がある。 階段の踊り場で佇んでいる作家のことである。 たいていの新人賞受賞者はそのまま終わってしまうか、1作、2作出しただけで終わってしまう。 作家になるよりも、作家を続ける方が遥かに困難なのだ。 幸いして私は、続けることに成功し、何社かの版元から安定的に注文も頂けるようになった。 そんな折にある担当者からいわれた。 「どうして各版元が赤松さんに注文するのか分かっていますか?」 「締め切り厳守で書いているからじゃありませんか?」 彼が指摘したいことが、そんなことではないと分かっていたがとりあえず答えた。 「違いますね」 案の上否定された。
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