「地方の立場からモノを言う」ローカル線存続へ一手 自治体がJR西日本の株式取得したワケ
山陰中央テレビ
ローカル鉄道をめぐる問題です。JR西日本は、利用が低迷している路線について、2023年度まで3年間の平均収支を公表、対象の17路線30区間はすべて赤字でした。 山陰エリアでも、JRが今後のあり方について協議に入りたいとしている木次線の出雲横田ー備後落合間は、100円の収入を得るのにかかる費用を示す「営業係数」が3424円と厳しい状況が続いています。その木次線が接続するJR芸備線では、国の再構築協議会が全国で初めて設置されるなど、今後のあり方をめぐる議論が進むなか、岡山県真庭市は2024年7月、JR西日本の株式約3万4000株を取得しました。鉄道の存続に向け、「奇策」とも言える一手を打った真庭市の狙いを取材しました。 10月16日、JR芸備線の存廃を議論する2回目の再構築協議会が岡山市で開かれました。再構築協議会は、鉄道事業者と沿線自治体などが国も交えて鉄道の存続、バスへの転換など、地域の実情に沿った公共交通のあり方を話し合う場で、全国で初めて設置されました。 議論の対象になっているのは、新見市の備中神代から広島県の備後庄原までの約70キロの区間。1日の平均利用者は2023年度は62人で、JRが沿線自治体との協議を求めている木次線の出雲横田ー備後落合間とほぼ同じ水準です。協議会には、国とJR西日本と、関係する岡山、広島の沿線自治体が参加。3年以内に議論の方向性を示すことにしています。 存続か廃止か、議論が始まった芸備線からさらに東に向かう「姫新線」。岡山県の新見駅と兵庫県の姫路駅を結ぶ158キロあまりの4分の1にあたる区間を抱えるのが、岡山県北部の真庭市です。人口約4万1000人の真庭市にとって「姫新線」は特に市内の中学・高校に通う生徒たちにとって、なくなてはならない通学の足、ですが市内の中国勝山と新見の間では厳しい収支状況です。こうした中…。 安部大地記者: 「真庭市は、JR西日本の株1億円を購入しました。そのねらいについて、市のトップに直接聞きたいと思います」 真庭市は2024年7月、約1億円でJR西日本の株式約3万4000株を取得しました。自治体としては、全国でも異例の試みです。 Q、JR西日本の株1億円分取得するねらいは? 真庭市・太田昇市長: 「資本参加しながら地方の立場からモノをいうときはモノを言おうと、取得することを決めた」 JR株取得直前の2024年7月、太田昇市長にその真意を聞きました。姫新線でも、存廃に関わる議論が始まることが懸念される中、太田市長は沿線自治体の声を強く示す必要があったと説明しました。 真庭市・太田昇市長: 「JRの経営計画を見ても、相対的に運賃収入が落ちる。むしろ新しい不動産を生かした事業を展開しようとしている。本質は国民の足を守る、鉄道会社だというその本質をですね、忘れないでやっていただきたい」 太田市長は今後、株主総会に出席し、地方の鉄道網の維持を求める発言をすることも検討しています。 こうした異例の対応に市民は…。 真庭市民: 「良いのでは、路線維持のために出していると思う」 「電車しか乗らない人はそれがなくなったらね、僕は1億円使おうが、困っている人のためだから、どういうことはない」 「金額についてはちょっと。その額が、皆が納得するかどうかというと『ん?』と思うところもある」 「相手が全国区の人と一市町村だと(効果)は厳しいのでは」 真庭市が取得した株式は、全体のわずか0.01%未満。市民からは、賛否それぞれの声が聞かれました。 真庭市・太田昇市長: 「一定の迫力というか、それを考えるとですね、1000万、2000万ではという思いがありました。今回鉄道になってみようかということにも繋がりますのでね。こういう議論をしてもらうこと自体が有難い、意義があると思う」 太田市長はメディアにも取り上げられ、赤字路線の問題に関心が集まったことも「投資」効果のひとつだと強調、今後は年間240万円余りと見込まれる配当金を、姫新線の利用促進のイベントなどに活用したいとしています。 真庭市・太田昇市長: 「特に、沿線は連携して利用促進、廃線したらもう二度と、と言っていいぐらい復活することはありませんので、本当に100年の計といいますか、考えて、真剣に今以上に真剣な取り組みを一緒になってしていただきたい」
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