“ミスド”を目指すとまた失敗する… セブンはなぜ「ドーナツ」に再挑戦するのか
ファミマは“デカく”で対抗、セブンは…
これによって、コンビニでも“できたて”の食が提供できること、その需要があることが証明された。しかし、ローソンの成功は店舗内に厨房を確保するという、設備投資あってのもの。セブンやファミリーマートが、そのまま真似できる仕組みではなかった。
「簡単に“できたて”を導入できないと分かり、ファミマはパンやパスタ、惣菜の“デカ盛り”など、お得感を打ち出し男性を中心としたニーズに活路を見出そうとしています。一方でセブンは“揚げる”という調理法をうまく活用し、できたてをアピールする道を模索しました。それが2021年から始まった『お店で揚げたカレーパン』です。結果、昨年は約7,700万個を売り上げギネス認定されるなど、定着しました。そのさらなる展開として始まったのが、今回のドーナツでしょう」 加えていえば、今夏、専用マシンで提供する「お店で作るスムージー」が一部店舗で品薄状態となるほど好調だったことも、セブンの“できたて”注力を後押しする要因になったのではと、渡辺氏は見ている。
「ミスドを目指してはいけない」ワケ
だが「揚げる」調理ならではの弱点もある。それはずばり、時間が経つと途端に美味しくなくなるという点だ。「とにかく揚げたあとに劣化させないように配慮すべき」と渡辺氏は語る。 「カレーパンだけならば、ある程度の売れ行きの予測も立てられ、適切な品質の商品を出すことができたでしょう。ところが、種類が増えると途端に予測が難しくなる。私がローソンの店長をしていた25年近く前、一時、店でアイスクリームの販売を行っていました。“サーティーワンアイスクリーム”のような、従業員がサーブするスタイルです。12種類のフレーバーがあったはずですが、チョコミントだけがやたら売れ、グレープフルーツは売れないなど、管理がとても難しかった記憶があります。それこそサーティーワンや、ミスタードーナッツなど、その商品を求めて来る専門店ならばラインナップを充実させる意味もありますが、他のものもついでに買うコンビニは、そうではない。定着には時間がかかるでしょうから、まずは売れ筋の味にだけ展開をしぼり、とにかく揚げたてで、おいしいと認知してもらうことが大事。セブンはミスドを目指してはいけないんです」 セブンの再挑戦は成功するのか否か。まずはお近くの店舗で試してみてはいかが――。
デイリー新潮編集部
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