「眼瞼下垂」はパーンと張ったゴム紐が少しずつ緩んでいくイメージ【一生見える目をつくる】
【一生見える目をつくる】#44 「眼瞼下垂」について、その名を聞いたことがある人は多いでしょう。 眼科編(11)眼球周囲結合組織のたるみから起きる目の病気 2018年には、歌手の和田アキ子さんが手術を受けたことを報告しています。 眼瞼とはまぶたのことで、なんらかの原因によって上のまぶたが下がってきたり、持ち上げにくくなることをいいます。症状が進むと上まぶたが瞳を隠すように覆いかぶさってくることもあり、視力にも影響するため、「目が見えにくくなった」と感じる人も多くいます。 眼瞼下垂には先天性と後天性があり、後天性の場合、その原因の多くは加齢です。加齢にともないまぶたを持ち上げる筋肉がたるみ、まぶたをスムーズに上げられなくなってしまうのです。 加齢性の眼瞼下垂では、まぶたを持ち上げる主な筋肉である眼瞼挙筋、挙筋腱膜、ミュラー筋が加齢でだんだんと緩んでいきます。ある日突然、ではなく、少しずつ症状が進んでいきます。われわれ眼科医が患者さんに説明するときには、「パーンと張ったゴム紐が、少しずつ緩んでいく。そうイメージしてください」と表現したりします。 年を重ねると、鏡を見て「若い頃と顔が変わったな」と感じることがしばしばありますよね。眼瞼下垂による目の変化も、顔が変わったと感じる原因のひとつです。長く生きていると、人のまぶたを支える筋肉は緩んでいくのが自然。いくつぐらいから緩んでくるのか、個人差はありますが、40代ごろから少しずつというのが一般的です。 眼瞼下垂が進行すると、二重まぶたの人は若い頃より二重幅が広くなることが多い。これが初期段階で、この段階では自覚症状はまだあまりありません。さらに進行すると黒目の上部にまぶたがかかるようになる。視野が狭くなるので、物が見えにくくなってきます。 「最近目が開きづらいな」「よく見えないな」という自覚症状が出てくるため、よく見るためにまぶたを一生懸命上げようとする。ところがまぶたを上げる筋肉はたるんでいるので、うまく機能しない。 すると、おでこにある前頭筋という筋肉が頑張って働きだすようになります。視野を保つために、前頭筋が眉毛とまぶたの皮膚全体を上に持ち上げる。これがクセになると、過剰に力が入っているせいでおでこにシワがくっきりと刻まれることが多いです。 (荒井宏幸/クイーンズ・アイ・クリニック院長)