J湘南・曹監督の認定されたパワハラと謝罪会見の中身とは?
そのうえで指揮官の進退を曹監督の気持ちと、クラブの株主などの意向を踏まえたうえで決める方針を示した。 「最も選手との関係性やスタッフとの一体感を大事にしてきたつもりなので、自分のマネジメント力の低さや先見性の無さ、指導者としての浅はかさを自分のなかで痛切に感じているいま、こうしたい、ああしたいということを僕がこの場で申し上げてもまったく説得力がない」 ただ、時間は待ってくれない。活動を自粛した曹監督に代わり、高橋健二コーチが指揮を執っているベルマーレは、リーグ戦で2分け3敗とひとつの白星もあげていない。清水エスパルスとの前節ではホームで0-6の大敗を喫し、順位も15位とJ2への降格圏が間近に迫りつつある。 パワハラ疑惑が報じられた直後こそ、逆境をはね返してやろう、という一丸ムードに満ちていた。しかし、2ヶ月近くも特異な状況が続き、その間に調査チームだけでなく、ベルマーレが独自に立ち上げたコンプライアンス委員会による面談も行われた。緊張感が精神的な疲労へと変わって久しい。 「とにかくチームを強くしよう、チームを成長させよう、と。自分だけがそういう思いを加速させて、周りの選手やスタッフの本当の気持ち、人それぞれの真実みたいなものを半ば度外視して、本当に見えているものが見えなくなってきたのかなと、考えることが本当に多かった毎日でした」 一部にしろ、信念をもって歩んできたベルマーレでの7年半を否定された。ショックを隠せない曹監督は現時点も自問自答を繰り返している。一方で調査報告書には「あそこまで選手と向き合ってくれる監督はいない」「曹さんのおかげで選手として成長できた」といった選手たちの声も綴られている。 真正面から思いをぶつけ合ってきた最愛の選手たちがいま、J2へ降格する恐怖とも必死に戦っている。フロンターレ戦を含めて、残りはわずか7試合。指揮を執るにしても、あるいは去るにしても。自らの進退に決断を下せるメンタルを一刻も早く取り戻し、目の前の戦いにだけ集中できる状況へベルマーレを導くことが、いま現在の曹監督ができる最大の仕事となる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)