《ブラジル》モデル96人の大半が非日系人=第3回着物ファッションショー=日本文化普及に新しい試み
リンス慈善文化体育協会(ABCEL、増田政光会長)は9日午後7時半から10時まで、同会館で『第3回着物ファッションショー』を開催、延べ1千人の人出でにぎわった。出場したモデルは男性を含む96人、大部分の人が非日系人だった。本紙の電話取材に増田会長は、「日系社会の高齢化が急速に進む中で、日本文化を非日系人に普及して、彼らにその継承を委ねるしかない」とイベント開催の目的を説明し、成功裏に終わったことを喜んでいた。 【現地映像】第3回着物ファッションショーの様子はこちらから!
静かな音楽が流れる中、キャットウォークと呼ばれるランウェイ(舞台の花道)にトップを切って上がったのは、今年96歳になる森シズさん(新潟県出身)と孫の斎藤タムリンさん(33)で、シズさんは「さすがに来年はでない」と謙遜しつつ微笑みをたたえていた。 非日系の女性が次々に静々と花道を歩き、軽く手を広げたり、頭を下げて日本式にお辞儀をしたりしてポーズを取った。小袖に手を添える人もいた。日本人女性がかわいらしさを強調するのに比べ、非日系女性は優雅さを強調した。「急がずにゆっくり歩く」ことで日本的な抑えた美しさが表現された。 モデル女性は白足袋に草履をはき、着物を着ている人がほとんど。長着に対して、中には白衣に緋袴という巫女装束、羽織り袴の半着を着ている人も見られた。 一方、男性は長着の和服、羽織り袴の侍姿の人、浴衣を着た人が花道を堂々と歩いていた。日本刀を抜いてぶんぶん振り回す人も。日系人男性の中には居合抜きのポーズを決める人もいた。男女とも扇子を開いて舞うように優雅にあおいで見せる人も。弓、矢、うちわ、中にはサクソフォンを吹きながらおどけて歩く男性モデルもおり、純日本的な礼儀作法からは外れて一部ラテン化したユニークなショーとなった。 増田会長の妻・増田ヒロコさんとファッションショー実行委員長を務めた斎藤ルシアさんは、2022年にJICAを通して日本で着付け研修を受けた。その研修同期の佐藤クリスチアーネさんもサンパウロ市から着付けの手伝いに駆け付けた。日本での研修を活かし、今回出場した96人のモデルの着付けをした。出場者の申し込み人数は102人だったので、着物は100人分用意した。 同協会理事で着物の責任者の森マリアさん(75歳)はサンパウロ市で生まれ、5歳のときリンスに来て育ったという。第1回の頃、着物は借りたりしていたが、亡くなった人のものをもらったりして少しずつ集めたという。JICA派遣で長野県の日本語教師が来伯したことがあり、その先生が帰国するとき着物を10枚ほど置いていってくれたという。 同協会では毎年盆踊り大会を催しており、その際に着物ファッションショー開催のことを知らせて出場者を募った。非日系人は着物や日本食に強い関心を持っており、モデル募集は案外簡単だったという。