『代官山蚤の市』で見つけた1920年代のハンティングジャケット!
常に独自の視点で独自の音楽を生み出していくDJとして世界中で活躍する田中知之(FPM)さん。音楽のみならずファッション、時計、クルマ、グルメとオールジャンルでの博覧強記を駆使した田中流「男の定番」をご紹介する連載です。 田中知之(FPM)の「DJ目線で指南するちょいウラな定番」
世界を舞台に活躍するDJ田中知之(FPM)さんが自らの美意識に叶った「男の定番」をご紹介する連載。今回のテーマは……。
■ 1920年代のハンティングジャケット
この連載のスタート当初からの担当編集である渡辺君と、東京・代官山T-SITEで年に数度開催される人気イベント『代官山蚤の市』に出向いた。フランス産のヴィンテージだけを扱うイベントは、いつもながら大盛況。常連出店者である、有楽町の阪急メンズ東京にもお店があるヨーロッパ古着店「ストレイシープ」のブースで、フランスから買い付けて来たばかりのお宝がぎっちり掛かったラックで、パタパタとハンガーを繰っていて見つけたのが、この1920年代製と思しき、生成りのコットン製ハンティングジャケットだ。
24時間耐久レースでおなじみの都市ル・マンで発掘した個体だという。小振りで特徴的な襟、後ろ下りの肩のラインに見事なAラインを描くシルエット、右身頃に小さなチェンジポケットがあるのが高ポイント。サイズも大きくアームホールも太いから、たぶんオーバージャケットの類いで、今まで似たような物すら見たことがない。 恐る恐るプライスをたずねると、私の予想額の半額くらいだった。全体に薄汚れているのは許せるとして、前身頃のポケットの内側左右にくっきりと大きな染みがある。恐らく動物の血液かと。「だからこのプライスなんです」と店主の世田さん。「なるほど、この染みさえなかったらなぁ」とラックに戻そうとすると、耳元で渡辺君が「あの人なら落とせるかもしれませんよ」と。 あの人とは、東京・表参道の路地裏に50年以上前からある“青山ハイクリーナー”という街のクリーニング屋さんの店主・山本さん(御年84歳)。界隈では染み抜きの天才の異名をもつレジェンドだ。渡辺君の言葉に一縷の望みをかけてジャケットを購入。翌日、山本さんのもとに持参した。