「SNS型投資詐欺」“全国初摘発”男女90人が一斉逮捕…被害額は10億円超か 中高年を“お手軽”にだます狡猾手口の実態
トクリュウの証言
筆者は、世間の耳目を集めた事件で主犯格とされた半グレ(今でいうトクリュウ)から次のような手紙をもらったことがある。2020年頃のことである。 「暴力団と半グレのシノギは共有され、違う形態へと移り変わっていきます。『オレオレ』ばっかりをマークしていると、その裏では違うシノギが新たに顔を出すというような塩梅(あんばい)です」(『だからヤクザを辞められない』新潮社 2021年) 実際、彼の言う通りで、その後のコロナ禍では、持続化給付金詐欺やキャッシュカードすり替え詐欺(詐欺盗)が流行。コロナ禍の外出自粛が解除されて以降は、「ルフィ事件」に代表される広域強盗事件が頻発した。
犯罪社会のプロティアン・キャリア
「プロティアン・キャリア」というキャリア用語がある。変化自在なキャリアという意味だが、犯罪者もこれまでに身につけたスキルを方向転換し、新たな犯罪に応用するのである。 特殊詐欺の検挙人員は、2015年以降、毎年2000人以上に上っている。マンションの一室などハコ(詐欺拠点)の中で詐欺電話をかけるかけ子に比べて、受け子や出し子は逮捕されやすく(昨年は検挙人員の7割以上)、人材が不足傾向にあるのかもしれない。 特殊詐欺のかけ子をSNS型投資詐欺の“打ち子”に転用することは、合理的であるし、犯罪のプロティアン・キャリアとみることができる。
SNS型投資詐欺やロマンス詐欺は「ローリスク、ハイリターン」
オレオレ詐欺のような特殊詐欺、カードすり替え詐欺のような詐欺盗(さぎとう)は、かけ子、受け子の募集からトレーニング(おそらくロールプレーイングで即席教育)が不可欠であった。しかし前述のように、被害者に接触する受け子や出し子などの検挙率が非常に高く、人材枯渇傾向にある。 強盗は、欲と度胸があれば、今日実行犯を集めて、明日にでも犯罪を実行できる。ハイリスクだが、情報がしっかりしたものであればハイリターンが可能である。ただし、報道などで明白であるが、実行犯が逮捕される可能性はほぼ100%に近い。 これら受け子や出し子、強盗犯が逮捕されるのは、街角に設置された複数の防犯カメラの映像を集めて分析し、被疑者の足跡をたどる捜査手法、リレー捜査のたまものである。だから、近年では、犯罪者側も監視カメラを用心するようになっており、リレー捜査対策を講じている(まねされると困るので、詳細は割愛させていただく)。 特殊詐欺や強盗という犯罪の「足がつく」点を考慮すると、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺は効率がいい犯罪である。被害者の欲や恋愛感情に付け込み、言葉巧みにだまして金を詐取するから証拠が残らず、監視カメラを気にする必要もない。アカウントさえ消してしまえば、追跡は極めて困難になるのだ。