「世界一無力なCEO」目指すリクルート出木場氏、社員に熟考を奨励
1980年代後半、リクルートは日本の内閣を退陣に追い込んだ贈収賄事件の渦中にあった。創業者が会社を去り、多額の負債を抱えた同社は、残された社員らが自らの手で問題を解決し、より独立した柔軟な企業文化をつくり上げた。勤続約7年で早期退職金の支払いを受けられるようにしている。
「人々を追い出そうとはしていない。考えることを奨励している」と出木場氏は話した。
出木場氏はよれば、人工知能(AI)の時代には、人々が自分の仕事について、そして自分が何をしたいかを考えることがさらに重要になる。例えばコーディングの仕事は、AIに取って代わられる可能性が高いと指摘する。リクルートもまた、人材と企業をマッチさせる能力を向上させるためAIに多額の投資を行っている。
昨年11月にリクルートHDの株式を1.1%取得したバリューアクト・キャピタルによると、同社は成長分野で有利な立場にあるにもかかわらず、依然として過小評価されている。アクティビスト(物言う株主)であるバリューアクトは、リクルートHD株には2倍の価値があると主張する以外、多くを述べていない。それ以降、2000億円の自社株買いを発表したこともあり、リクルートHDの株価は40%余り上昇した。
「アクティビストだけでなく投資家は総じて非常に賢い。私は彼らと良い会話をしている。目を見張るような意見もある。われわれは全てのステークホルダー(利害関係者)から常に学ぼうとしている」と出木場氏は述べた。
株主の声に耳を傾けることは上場企業の責務の一部でもある。出木場氏の前任者は、現金の調達と大型買収に使える株式の発行のため、14年に同社を上場させた。しかし、18年の12億ドルでのグラスドア買収を除くと、リクルートHDは大規模な合併・買収(M&A)を行っておらず、23年末の現預金残高は約73億ドルだった。
出木場氏は、ターゲットを探しているかとの質問に対し、企業の価格について買い手と売り手の間でまだ大きな開きがあり、機会を見つけるのが難しいと答えた。