ウエストランド井口の疑問「全国ツアーをやる意味は?」紅しょうがと語る
ウエストランド井口と構成作家・飯塚大悟が毎月のお笑い界の出来事を勝手に振り返る連載「今月のお笑い」。なんだかざわざわする出来事が多かった8月のお笑い界を明るく語るため、全国ツアー開催中の紅しょうがの2人をゲストに迎えた。「キングオブコント」で注目したい準決勝進出者や、銀シャリが単独ライブとは別に行っている企画ライブ「銀シャリ食堂」の良さ、ニューヨーク単独ライブといった話題のほか、女芸人の立ちふるまい方や健康についても。1つのきっかけで大炎上するかもしれない芸能界を軽やかに渡り歩いている紅しょうがと、歯を食いしばって信念を貫いている井口の掛け合いをお楽しみあれ。 【写真】豪快キャプテン 構成 / 狩野有理 ヘッダーイラスト / 清野とおる ※取材は8月25日に実施。 ■ 今の大阪を背負うのは豪快キャプテン? ──今月は紅しょうがのお二人をお迎えしました。 井口 飯塚さんとは「THE W」と「紅しょうがのオールナイトニッポン0(ZERO)」(ニッポン放送)つながりですか? 飯塚 そう。「THE W」優勝後の「オールナイトニッポン0」も担当させてもらった。「THE W」には毎年携わっているので、出場している芸人さんに対して勝手に応援する気持ちになっちゃうんですよね。 井口 「THE W」には何年出ていたんだっけ? 稲田 決勝は5回出させてもらいました。 熊元プロレス 日本テレビの担当スタッフさんは毎年変わるんですけど、飯塚さんはずっとおるイメージです。もしかして、蝶の(採点)システムを考えたのも飯塚さんですか? 飯塚 「蝶にしましょう!」とは言っていないんですけど、「点数じゃなくてもいいんじゃないですかね?」みたいな話はしました。 ──井口さんの紅しょうがに対する印象は? 井口 紅しょうがが面白いっていうのは「THE W」で優勝するかなり前から聞いていましたよ。だから、嫌だなーと。 熊元 ええ? なんで嫌なんですか(笑)。 井口 面白い人なんて嫌じゃん。そのときはまだ会ってなかったし。会っちゃうと結局いい人なわけだから。で、「THE W」で優勝して、「有吉クイズ」(テレビ朝日)で熊元プロレスと手四つで戦って。 稲田 あれ面白かったなあ。 井口 だから、チャンピオン仲間ですね。 稲田 井口さんってそういうのを感じることあるんですか? 「こいつらとはチャンピオン仲間だ」って。 井口 それはそうだよ。だってチャンピオン以外を下に見ていく集団でしょ? チャンピオン仲間って。 稲田 あ、じゃあ私らは違いました! 仲間じゃないです。 井口 優勝ってなかなかできないからね? 稲田 それはわかるんですよ。だからと言って普通はチャンピオン以外を下に見ないんですよ(笑)。 井口 東京にはいつ来たんだっけ? 熊元 1年半前です。ヨシモト∞ホールに所属させてもらっているんですけど、今年も大阪からめっちゃ入ってきたので楽しくやらせてもらっています。最近のムゲンダイ、大阪芸人だけの日、とかもあります(笑)。 井口 もうめちゃくちゃだよ。本当にたくさん来ているもんね。マユリカとか滝音、さや香とか。逆に今、大阪には誰がいるの? 熊元 豪快キャプテンがいます。 井口 なんで豪快キャプテンが大阪背負うことになっちゃってるんだよ。 熊元 今日も2つテレビ出てますから。「マルコポロリ!」(関西テレビ)と「笑神様は突然に…」(日本テレビ)。Xのトレンド入ってましたよ。 稲田 いやいや、豪快キャプテントレンドに入ってない、入ってない! それはあんたがよく見てるからおすすめに出てくるだけやで? 私まったく出てこうへんもん。 井口 東京についてはどう思っているタイプの2人なの? 「やっぱ大阪やで!」みたいなタイプ? 熊元 そんな人まだいます!? 井口 わかんない。僕が虚像の関西人に文句言い続けてるだけかもしれない(笑)。さや香・新山にも言われた。「そんなやついないんですよ!」って。でもいまだに、関西のことをちょっとでも悪く言うと猛反撃食らうよ? 「関西人が選ぶつまんない芸人」みたいなランキングにも選ばれてるし。 稲田 あと誰ですか? 井口 僕らとマヂカルラブリーと錦鯉。と、爆笑問題。 飯塚 近しい人ばっかり(笑)。 井口 そもそも僕が岡山だし! 関西のこといろいろ言うけど、実は岡山出身だし、「よしもと新喜劇」とか「吉本超合金」とか関西の番組を見て育っているから。 熊元 ええ? その感じ全然出してないですねえ? 井口 そのうえで、悪口言ってるからね(笑)。 ■ 紅しょうがは時代のあおりで過小評価されている 飯塚 今、忙しさと楽しさのバランスはどうですか? 熊元 いい感じに楽しく忙しいです。よしもとのめっちゃ売れている方みたいに、1日12ステとかはないので。 稲田 めっちゃいいです。今日も舞台あって、雑誌の取材が2つ。毎回違う環境も楽しいし、一緒にお仕事する方も紅しょうがを好きでいてくれる現場も多くて。 飯塚 なるほど。すごく失礼な言い方になっちゃうかもしれないんですけど、紅しょうがって過小評価されている気がしていて。 熊元 え、ほんまですか? 飯塚 時代の流れとして、「モテたい」とか「売れたい」みたいなことを言わないような、媚びなくてクールな女性芸人のほうが評価されやすい風潮があるじゃないですか。そのあおりを受けているのが紅しょうがなんじゃないかなと。ネタもすごいし平場も面白いから、もっと評価されていい気がしていて。 井口 それで言うと、昔は久本雅美さん、マチャミとかが、独身ギャグみたいなことをすごいやっていましたもんね。「好き」「カッコいい」と男性タレントに言い寄って「誰がこんな奴と付き合うか!」とツッコまれる、みたいな。この10年、15年で一気に変わって、女性独身ギャグって本当にもうやっちゃダメな感じになってる。 熊元 最近はもう逆になってきていて、鬼越トマホークさんが「すごいいい匂いがするね」「よく見たらかわいい」とかいい風に言ってくれるんですけど、これが、なんかめっちゃムカつくんですよ(笑)。イジってきてるとかではないみたいなんですけど。 飯塚 「有吉クイズ」みたいに、男芸人と対決してかわいそうに見えない女芸人って数少ないと思うんですよね。 熊元 あれに関しては、井口さんがガッツリちゃんと対決してくれなかったので、どっちかというと井口さんがかわいそうになる感じに見えてましたよね(笑)。私がマイナスになるというよりは、男性がマイナスに見えないようにしなあかんなっていうのは気にします。こっちが独身ギャグしたら、嫌でも男性芸人にツッコませることになってまうので。でも、井口さんは女性をイジらないですよね? 井口 この連載でも言ったことあるけど、僕は女性に対する個人的な悪口は言わないんだよ。女の子には優しくしてる。なぜなら、ルパンが好きだから。 ──男の子だから、女の子には優しくするという理屈ですよね。 井口 もともとそういう素養もないですしね。「おいブス!」とか言う人間性がない。「誰が言ってんだ!」にもなるし。 飯塚 今っていかにそういうワードを言い換えるか大喜利みたいになってて、でも井口くんはその流れにも加担してない気がする。毒舌だけど、そこを一歩踏み越えないから下品に見えない。 井口 言う気にならないです。女の子にそんなこと。 熊元 さすがルパン(笑)。 ■ 暗い話題の多かった8月唯一の癒やし ──では8月のお笑いの話をしていきましょう。 飯塚 今月は、なんか暗い話ばっかりで。 井口 まあ、なんて言ったらいいのかわかりませんけど、フワちゃんのことで言えることがあるとしたら、僕は子供のときに、じいさんとかばあさんに「あんな奴と友達になるな」と言われるのが一番嫌だったから、「こんな奴と仲良くするのがよくない」とかいう批判に対しては、友情に他人が関与するべきじゃないと思う、ってことくらいですね。めちゃくちゃ嫌だったんで、「あいつとはもう遊ぶな」とか。あとは、本当に1回の失敗でこんなふうになっていいのかなとは思います。もちろん今回の件はよくなかったし、悪いことはちゃんと反省しないといけない。反省して反省して、もし相手が許してくれたときに、それでもダメなのか。 飯塚 当事者間では解決したという報告がある前にラジオが打ち切りになってしまって、この対応がスタンダードになるなら、パーソナリティとラジオ局の関係性は変わってくるなと思った。今月はなんだかいろんなことが起きすぎて、2人ともけっこう大変なことがあったのに1回も休業してないウエストランドすごいってなってるよね(笑)。 井口 ユニクロのCMに出たの、いぐちんランドのあとですからね。 飯塚 芸人界に希望は与えているのかもね。 熊元 「モテたい」みたいなことで言うと、まあ私より稲田さんのほうが強いですけど……。 稲田 「モテたい」は熊元さんめっちゃ言うやん。私は俳優さんと結婚したいだけやから。 熊元 しかも稲田さん、自分の今のアカウントで俳優さんにDM送りまくったりしてるので、もしかしたら唯一、男芸人と同じ感じで炎上するかもしれない……(笑)。 井口 そうなったらめっちゃ笑うけどな(笑)。そのパターンもあるの!?っていう。 飯塚 フワちゃんの件の超余談だけど、トンツカタン森本くんが何か発信するんじゃないかってめちゃくちゃ注目が集まっていたときに、「タイマン森本」でネコニスズ赤ちゃん編を公開してみんなが膝から崩れ落ちてた(笑)。 井口 あれが一番面白かったです。注目度が高いからみんな動画を見るじゃないですか。そのコメント欄、「なんだこれ!」「こんなんいいからフワのこと話せ!」「つまんな!」とかめっちゃ書かれてて(笑)。 飯塚 唯一の心安らぐ瞬間だった。 ■ 「キングオブコント」準決勝で注目したいのは 井口 「キングオブコント」は準決勝進出者が発表されて、タイタンからはシティホテル3号室と春とヒコーキ。タイタンの所属契約組で「キングオブコント」に挑戦してるのは2組しかいなくて、2組とも行くっていう。 飯塚 ラブレターズは受かったけど、ジグザグジギーは落ちちゃった。 井口 落ちました。TCクラクションは準決勝に行くの5年連続なんですよね。 飯塚 TCクラクションは「M-1」でも準々決勝まで行ってて、両方結果を出しているのがすごい。 稲田 ザ・プラン9さんが9年ぶりで、6人になってからは初めて。ずっとギブソンさん(ヤナギブソン)は娘さんのピアノ発表会のインスタ上げてはるんで、パパが元気というのはいいですよね。楽しみすぎる。セルライトスパさんも8年ぶりやと言ってました。 飯塚 お二人は出場してどうでした? 稲田 私ら、準々決勝の出番が早かったんですよ。でも、みなさんむちゃくちゃウケていて。朝からお客さんの盛り上がり方がすごくて、みんな「めっちゃ温かかった」と言ってました。 熊元 8月頭に2回戦があったんですけど、会場が入っている建物自体にいろんなホールがあって、別のイベントもやっていたんですよ。私たちの楽屋から会場までの導線に、小学生のバレエの発表会の会場があって、「露出してる人たちは何か羽織ってください」と注意されて大変でした。私、バスタオル1枚やったんで(笑)。ガリットチュウさんもほぼ裸で、移動するのにめっちゃ肩身狭そうでした。 稲田 東京はすごい移動がありますね。袖に行くまでに1回外通るとか。 熊元 去年も、衣装着た状態でお客さんの前通らなあかんていうのもありました。ウエストランドさんは「キングオブコント」は出てはるんですか? 井口 出てない。昔に何回か出て、10年以上前にセンターマイクを机と椅子に変えるだけのネタで準決勝に行ったこともあったけど、本当にとんでもないことになった。間違えてお客さんにも話しかけちゃって。 稲田 あはははは!(笑) 間違えてってなんですか? 井口 スベってるし、お客さんに「ねえ?」とか話しかけちゃって。適当にしゃべってるから時間もオーバーして、照れ笑いして強制暗転で終わった。今はウケてても落ちるくらい狭き門になってるけど。 飯塚 トゥリオ(ストレッチーズ高木、サツマカワRPG、ひつじねいり松村によるユニット)はどういうスタンスで出ているんだろう? 井口 サツマカワRPGはがんばってるんじゃないですか? あとの2人はわかんないです。僕に「コントなんてやるな」って激詰めされてるので(笑)。まあ、やるんだったらみんなに敵視されながらでもやらなきゃいけないんだぞ、とは言っていますけど。 飯塚 誰かの1枠だったかもしれないわけだからね。 稲田 井口さんは好きなコント師の方いらっしゃるんですか? 井口 (間髪入れず)いない。 稲田 速ー。すごいわ。 井口 でも楽しみではあるよ? 稲田 何が楽しみなんですか! 決勝見ないでしょ!? 井口 見る、見る! 友達とかは好きだから! 稲田 私も友達は好きですけど、そんなん言っちゃダメじゃないですか(笑)。 井口 いいんだよ。友達はえこひいきするもんなんだから。 稲田 わかります。いや、友達のボケってめっちゃおもろいんですよね。 井口 そうでしょ? なぜなら友達だから。 ──準決勝進出者で注目したい組はいますか? 熊元 福岡のよしもとの劇場から初めて準決勝に進出したのが、気になるあの娘というトリオで、すごいなと思います。もともと大阪のよしもと漫才劇場におった支配人が福岡に行って、いろいろ改革して、その1年目で上がってきた。気になるあの娘自体がもちろんすごいんですけど、支配人のすごさも感じました。 井口 落ちちゃったけど、札幌よしもとのしろっぷさんのラジオにこの前出させてもらって、準々決勝に行った話を聞いたんですけど、地方から賞レースに挑むのって本当に難しいんだなって思いました。ネタを磨くにしても、お客さんの数も少ないし。そういう人たちが決勝行ったらすごいよね。本当にオグリキャップ(※)的な。地方を背負って出てくる感じになる。 ※編集部注:地方競馬出身でのちに中央競馬のGI優勝した競走馬。 ■ 「銀シャリ食堂」めっちゃいい ──先ほど話に出た、今福岡劇場の支配人をされている武林さんとは、紅しょうがのお二人は大阪時代に一緒でしたよね。どんな方なんですか? 稲田 ずっとライブを観てくださっていて、すごい支配人やと思います。めちゃくちゃ忙しくても単独ライブも観てくれて。そういう面での芸人愛があって、福岡でもフェスをやったり、ユニークなライブを打ったり、新しいことをされていますね。 井口 改革をしてるんだ。 稲田 井口さんは福岡のよしもとの劇場は行ったことないんですよね? 井口 ないよ。入れてよ。 稲田 ええ? 私?(笑) 井口 でもちょうど昨日、銀シャリさんの「銀シャリ食堂」っていうライブに呼ばれて宮城県の会館に行ってきた。あ、橋本さんがこの連載読んでるって言っていましたよ。 ──おお! 井口 橋本さんがいつもこれを読んで、「そうや、これでええんやな」と思ってくれているらしいです。 飯塚 本当?(笑) 銀シャリさんって今もめっちゃ新ネタ作っているんだよね。「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)で以前、お邪魔したんだけど、「銀シャリハウス」と言って一軒家を借りてネタ合宿して作ってる。すごいストイック。 熊元 ええーすげえ。私らも、ウエストランドさんの1個前の「銀シャリ食堂」に出させてもらったんですけど、その前日に単独をやってはって。 井口 単独と同時に「銀シャリ食堂」やってるんだ。 稲田 鰻さんがMCをされるコーナーがめっちゃ面白いですよね。 井口 仕切れる人じゃないほうがMCをやることでいろんなことが起きるっていう、新しい方法だよね。ネタやって、ゲスト呼んで、コーナーやって、すごくいいなと思った。「食堂」スタイル。 稲田 めっちゃいいですよね。 井口 福岡の劇場も呼んでほしいなあ。でも、僕友達いないライブが一番嫌いで。 熊元 よしもとで友達と言うと誰になるんですか? 井口 友達というか、銀シャリさんとかは優しいし、昔から一緒になっているから、そういう人だったらいいんだけど、福岡なんて絶対変な奴しかいないでしょ!? 怖い奴しか。よしもとの知らない人って怖いんだよ。 熊元 若手でもですか? 井口 若手なんか一番怖い。兄弟なんかめっちゃ怖かったもん。最悪だよ。 熊元 いかつい感じだったんですか? ──「今月のお笑いネタライブ!!」で共演したときは兄弟のほうから井口さんに歩み寄ってくれていたじゃないですか。 井口 僕が言ってることにマジで返してきて怖かったんですよ。「お抹茶なんかつまんねえよ!」っていつも通りのノリで言ってたら、「俺も本当にそう思います」とか言ってきて。え? こわ、と思って。 紅しょうが あはははは!(笑) 井口 「よしもとの芸人、マジで誰も笑ってませんでした」とか。いや、僕はそんなつもりで言ってないから! めちゃくちゃ怖かったよ。 ■ 井口、ついに家で水を飲む 熊元 (ペットボトル3本目を飲み干す) 稲田 え、水飲みに来たん今日? どないしたん水ばっか飲んで。 井口 水は飲んだほうがいいからね。健康に気を使って生きないと。ついに最近僕も水を飲むようになって。水とお茶を。 ──ついに? 井口 今まで、家ではカフェオレとカルピスしか飲んでなかったんで。 熊元 うわ……。 稲田 やばそー……。 井口 ついに水に変えた。糖尿病とかになっちゃうから。 稲田 でも確かに、不健康やったらけっこうキツいです、お兄さん。見てられない。絶対元気なほうがいいです。 井口 そうそう。そういう意味でも水飲んだほうがいいからね。水飲んだほうがいいことと、検査に行くことを啓蒙してる。 熊元 入院されてましたもんね? 井口 入院して手術して、PET検査した(※)。うちは社長が予約取ってくれるから。配信をやっていたら急に入ってきて、「予約したから検査行きなさい!」って。中学生の配信中に、部屋に入ってきちゃうお母さんみたいな。 稲田 あはははは!(笑) 「今やってんねん!」みたいな。 井口 そうそう。配信中にお母さんが入ってきちゃうやつの、最年長。41歳。で、社長に野菜食べなさいって怒られて。 熊元 いい社長ですねえ。 井口 でも野菜食べたくないから、食べたふりして写真撮って。やってることクロちゃんと変わらなくなってきた(笑)。 ※編集部注:体調を崩したわけではなく、もともとあったしこりを取るために手術&入院。退院した日に「バラいろダンディ」(TOKYO MX)出演したことは「6月のお笑い」で話している。「PET検査の結果も大丈夫だったけど、『そんなことより太ってるぞ』と言われた」(井口)。 ■ 珍しい全国ツアーの苦労話 ──紅しょうがの「今月のお笑い」もぜひ聞かせてください。 稲田 今、初めて全国ツアーをやらせていただいていて。名古屋と大阪が終わって、次福岡で、最後が東京の4カ所なんですけど。 井口 すごいなあ。全国ツアーってどういう良さがあるの? なんでやるの? 熊元 東京と大阪以外では単独をやったことなかったので、いろいろやってみたいなと。 稲田 熊元さんがYouTubeで、タンクトップ着て料理する「タンクトップキッチン」というのがあって、そのライブもしたかったんです。 熊元 (小声で)井口さんにあんまそんなん言わんでええって……。 井口 「タンクトップキッチン」? 何それ? 稲田 単独は単独で1時間ネタやって、別の公演として「タンクトップキッチン」をやってます。シークレットゲストも呼んで。 井口 ああー、「銀シャリ食堂」的な。 稲田 そうですそうです(笑)。料理と単独を各地で楽しんでもらえるっていう。料理のツアーやった芸人さん、今までなかったんちゃうかな。 ──全会場で「タンクトップキッチン」もされている。 稲田 はい。だから、「料理ができるところ」という会場の選び方をしていて。匂い面を考慮したり。 熊元 匂いはだいぶ「残ると困る」と強く言われました。「モツとかはあかん」とか。いわゆるお笑いの会場だとIHを使っていいところがなかなかないんです。 飯塚 全国ツアーの苦労話として、あんまり聞かない話ですね(笑)。 井口 「この会場はウケやすい」とかじゃなくて、「匂いが残らないように」ってなんなんだよ(笑)。 稲田 「ここでは包丁使えへん」とか、いろいろ大変なんですよ(笑)。 井口 僕が聞いたのは、全国ツアーではその地域のテレビ関係者の方を招待するから、そこで番組が始まる可能性があるらしいです。僕らは単独をやらないからそういうのはできないけど。 稲田 なんでやらないんですか? 井口 こっちは毎月新ネタ作ってるのにそれは「すごい」と言われなくて、単独だけ「すごい」と言われている感じが嫌なんだよ。「この音楽使ってるんだぁ~」とかもキモいし、まずファンが集まってるところで言いたい放題言ってもつまんない。よしもとの劇場に行ってよしもとの悪口言うのが一番気持ちが高揚するわけじゃん。なんでも許してくれる人の前で「これ言ったらウケるんだろうな」って思うのも嫌だし、でもウケたいから言っちゃうときのさもしさ。それが楽しくない。 稲田 アウェーのほうがいいんですね。 井口 だから「M-1」が一番いいんだよ。あそこでいろいろ言うから意味がある。あと、僕らのネタ的に、一度に何本も見るもんじゃない。出てきて怒って、出てきて怒っての繰り返しだし、作品性もないし。 稲田 怒るために1回はけるのめっちゃおもろいですね(笑)。 井口 1回はけないとずっとブチギレてる人になっちゃうからね。だから、「タンクトップキッチン」とか「銀シャリ食堂」はいいと思った。「ウエストランドのライブです」と言いつつ、ゲストも呼んで、いろんな地方でやるっていう。でもテレビ関係者が僕らを見て好きになるかなあ? 好きにならなそうでしょ? 「なんだこれ?」ってなるでしょ、絶対。 熊元 そんなことないですって(笑)。でも地元の悪口言うてくれたらお客さんもうれしいんじゃないですか? 井口 確かに、今日も八戸の悪口言ってきたけど。 熊元 八戸で悪口言えます?(笑) 井口 逆に「なんにもないなあ」とか言って。笑ってる人もいたけど、たぶん何人かは本当に怒ってた。 稲田 あとは、ツアーをやる理由としてはみんなその土地の食事を楽しみたいというのがデカいと思います。でもそこは興味ないですよね? 井口さん。 井口 スケジュールがそんな感じにならないと思う。地獄のようなスケジュールになるのが嫌だから。 稲田 言えばゆっくりのスケジュールにできますって。泊まりで。 井口 でも、テレビがあったら出たいしね。「バラバラ大作戦」(テレビ朝日)も全部出たいし。遠方でライブをやってる間に楽しそうなテレビがあったら、嫌じゃん。 熊元 テレビに出たいんですね。 井口 そう。テレビが好きだから。 熊元 それで新ネタ作ってるのはすごいですねえ。 井口 そうなんだよ! それを言ってほしいんだよ。こんなに「テレビ、テレビ」言ってる奴が誰よりも新ネタ作ってるんだから。すごいえらいはずなのに全然誰も褒めてくれないし、単独やってる奴らばっかり崇められて。だからムカつくんだよ! ■ ニューヨークの追加公演、結局売れるんかい 飯塚 ニューヨークの単独ライブ「そろそろ、」も全国回って、追加で決まった東京凱旋公演がお盆にあったんだけど、チケットが1000枚余っているとかで、本人が緊急動画を出したりしているのが話題になっていて。それを見て、「ニューヨークでも売れ残ることがあるんだ!」と思って、ちょっと親近感が湧いた。 井口 (チケットが売れ残るのは)次のフェーズに入ってるっていうのもありますよね。安定期というか、後押しがすごかった状態から1個抜けるとまた難しさが出てくるというか。 飯塚 でも、告知したらあっという間に売れた。 井口 売れたんかい。 飯塚 「チケットあるんだったら行こう」という人がめちゃくちゃいっぱいいるってことだよね。 井口 もうどうせ売り切れなんだろうなって思い込んで諦めていたんでしょうね。 飯塚 僕も観に行ったんだけど、めちゃくちゃ面白かった。賞レースとか意識してないだろうからネタが自由だし、「お客さんに伝わらなくても2人がやりたいんだろうな」みたいなくだりを、ずっと2人が楽しそうにやってるのもよかった。あと客席にかけおちの青木マッチョが来ていて、めっちゃお客さんに写真撮られてた。 稲田 売れ方すごいですよね。 熊元 青木マッチョ、クリスタルジムで働いていて、マンツーマンで教えるコースはほぼ予約取られへんって聞きました。 井口 なんか嫌ですね。 稲田 ええ? 何が? 井口 青木マッチョはまだ会ったことないから、悪口言えるときに言っておこうと思って。 熊元 どうせいい奴ですもんね。 井口 会ったらね。絶対いい奴でしょ。芸人で嫌な奴なんていないんだから。 飯塚 でも、まだトリオとしてちゃんと知られていないから、ここから大変だろうね。 井口 1人がドーンと売れてひずみが出てきてるから、たぶんダメなんじゃないですか? そういうパターンばっかりなんだから。 熊元 それでダメになったパターンあります? 井口 いやいや、まあ、だいたいダメになるでしょ。 稲田 例え出ないじゃないですか(笑)。 ■ 他人に本当に興味がない爆笑問題・田中 井口 一番衝撃だったのは、この間の「タイタンライブ」で、ネコニスズ舘野さんが爆笑問題・田中さんに挨拶したら、「あれ? まだ出るの?」って言われていて。ここに来て、まさかのダニエルズとごっちゃになってたんですよ! タイタンなんて人数限られてて、散々、一緒にやってるのにまだわかってない。 飯塚 髪の毛長くしたからあさひさんと見分けがつかなくなったとか?(笑) 井口 全然いろいろ違うし! ダニエルズは毎週のように爆笑問題のYouTube出てたのに。他人に興味がないとは言ってるけど、これほどまでかっていう。恐ろしかったです。 ■ 信念を口に出していく 飯塚 鬼越のYouTubeで「現役NSC生に聞いた憧れていない芸人ランキング2024」という動画が出て、3位のアンジャッシュ渡部さん、1位の宮迫(博之)さんに挟まれて、2位が太だった。 井口 いいじゃないですか。そこに入るなんて光栄なことですよ。でも、リアルなことを言うと僕なんて本当に誰からも憧れられてない。和田まんじゅうとも話したけど、「有吉クイズ」とかでがんばってることなんて誰も憧れないんだろうなって。 飯塚 思ったのが、井口くんや、きしたかの高野さん、オズワルド伊藤さんみたいに「なんだよこれ!」ってデカい声出すの、大学お笑い出身の人はあまりやっていないよね(笑)。今、そういう芸をやりたくないんだなろうなって。 井口 最近若手と絡んでて気付いたんですけど、楽屋で「全然知らない奴がいるなあ!」とか言っても誰も「ちょっと!」って言ってこないんですよ。学生時代からイジりとかなく生きてきているんだろうなと。 飯塚 「平場で活躍したい」という思いがあんまりないのかもね。 井口 純粋に面白いネタをやりたい人が増えているんでしょうね。だからこれから芸人始める人は、絶対こんな僕みたいにイジられてる奴、好きにならないんだろうなって悲しくなります。 稲田 でも私が思うのは、憧れないんじゃなくて、お兄さんに勝てないからですよ。 井口 ……いいこと言うなあ。 稲田 勝てないですもん。目指せない。お兄さんみたいな体型でお兄さんみたいなことしてる人って、お兄さんしかいない。これって、たぶん5cmでも身長高かったらまた違ってくると思うんです。 井口 だんだん悪口になってきてない……? 稲田 いやいや、お兄さんが一番適切な形を叩き出してるから、目指せないっていうだけです。 井口 じゃあ、好きではいてくれてるってこと? 稲田 そんなんは知らん! 飯塚 ネタのセンスとか斬新さで勝負し続けられるのって一部の天才だけで、なんていうかつぶしがきかないと思うんだよ。人気が陰ったときに急にデカい声出せないから。 井口 じゃあ、僕はデカい声を出し続けるしかないですね。「これでいいのか?」と思うことけっこうあるんですよ。「これでいいはずだ」と思う気持ちと、「自分がもうおじさんだからそう思うだけなのかな……」っていう気持ちが両方あるんですけど、耐え忍んで。 飯塚 デカい声出し続ければいつかはいいことがあると信じてやっていくしかない。 稲田 信念全部口に出すんですね(笑)。 井口 言い聞かせてやっていくしかないんだよこっちは! ■ 稲田にリストバンド付けてもらえなかった井口 熊元 この前「サマソニ」のお笑いステージでウエストランドさんとご一緒したんですけど、井口さんが「お笑いステージが復活したのは自分のおかげだ」と言いまくっていて。 飯塚 お笑いステージ、5年ぶりに復活したんですよね。あれって井口くんのおかげなの? 井口 そうですよ。6月に放送された「サマソニ」の事前特番「サマソニ愛」(テレビ朝日)をなぜか僕とサマソニの社長(SUMMER SONICオーガナイザーのクリエイティブマン代表の清水直樹氏)でやったんですけど、僕は全然音楽詳しくないし、特に洋楽はわからないから、(サマソニ出演者の)GLAYのことと「昔お笑いステージ出てました」の2本柱でどうにかやりきったんですよ。 井口 それで「前はお笑いステージやってましたよね」っていう話をしたら、社長が「そういえばそんなのあったな、復活させるか!」となって。サマソニ動かしたってすごくないですか? 熊元 それはほんまにありがたい話ではあります。 飯塚 「井口が動かした」とはあんまり話題になってないね。 井口 Xでポストしたんですけどね? 熊元 あ、ネットでも言ってはったんですね(笑)。 井口 誰も言ってくれないなら自分で言うしかないからね。 稲田 そのサマソニでめっちゃ久しぶりに井口さんにお会いしたんですよ。で、楽屋パスのリストバンドを「付けて」って頼まれたんですけど、なんか断っちゃいました。あれはほんまにごめんなさい。 井口 そうだ、そうだ。リストバンドがうまく付けられなくて、付けてって頼んだら「え、嫌です」って言われてびっくりして。そんなの今まで普通にやってもらっていたと思うし、だいたいみんなやってくれるじゃん。でも「嫌です、キモいんで」みたいになって。なんで嫌だったの? 稲田 「嫌です」っていうのが私のコミュニケーションの取り方やったんですよ。「なんでだよ!」とか言われるかなと思ったら、すぐ別の優しい人にやってもらってたから、ちょっとかわいそうなことしてもうたかなと(笑)。 熊元 稲田さんの「嫌です」も速すぎやったんですよ(笑)。 稲田 ごめんなさい。言ってみたくなっちゃったんです。凹んでるやろうなと思って。 井口 今聞けてよかったよ。家で1人で思い出してたら「あれなんだったんだろう……」って気にしてたと思う。でも確かに、よくよく考えたらやばいな。41歳の汗だくのおじさんが、後輩の女性に「リストバンド自分で付けられないから付けて」って。一般企業だったら本当に訴えられたかもしれない。知り合いだし、芸人仲間だからいいと思ってお願いしちゃったけど。あと、なんで僕も付けられないんだよ! 左利きだからかな? うまく付けられてなくて。 ■ ウエストランドの新ネタ誕生 井口 バカリズムさんの旅番組「『特選!超快適バカンス 2024夏』in那須塩原」(TBS)が、NG行動をしてしまったら即帰宅というルールだったんですけど、僕は野菜を残したことで帰らされちゃって。まさか野菜嫌いがここで足を引っ張るとは。 稲田 なんで野菜食べないんですか? 井口 苦いから。 飯塚 全野菜が嫌い? 井口 キャベツとかは食べます。 熊元 細かく混ぜてあげたらいいってことですか? 井口 いや~、どれくらい? ハンバーグとかに混ぜてあればいけるかもしれない。 稲田 なんでこの人にバレへんようににんじん細かくして入れなあかんの? 何歳やねん!(笑) 食べ物で何が一番好きですか? 井口 米。1日1回は米食べないと嫌な気持ちになっちゃう。 稲田 へえー。チーズバーガーとか好きそうと思いました。 井口 チーズが嫌いだから。 熊元 知らんて……(笑)。 井口 ハンバーガーなんて僕が日本一食べてない可能性あるよ。パスタとか。トマトも嫌いだから。 稲田 じゃあ何で太っちゃってるんですか? 井口 楽屋弁当とかばっかりだし、100%外食だから。一切自炊しない。料理って熱いなってことに気がついて。みんな盲点であんまり言わないけど、全料理作るとき熱いんだよ。 稲田 あはははは!(笑) ああ~熱い、確かに! 熊元 タンクトップでしたらいいんじゃないですか? 井口 僕も「タンクトップキッチン」したほうがいいのかな? キャンプとかでも熱いじゃん。火が近くにあって熱いなと思って。 熊元 IHはどうですか? 井口 そんなの一番怖いよ。秘めたる熱さがあるんだから。一番やばい。 稲田 涼しいそうめん作るにしても、まず茹でなあかんから熱いですもんね。 井口 熱い! 吹きこぼれたりもするから怖いし。 稲田 料理に怒ってるのおもろいなあ。 井口 来月そのネタやろうかな。忘れないうちに(と言って、スマホにメモ)。意外といないもんね、料理に怒ってる人。で、言わずもがな包丁は危ないし。 飯塚 危険? 井口 危険なんですよ。よくあれを日常の行為としてやるなあっていう。刃物と火っていう世の中の怖いものがあそこに密集してるのに。 飯塚 腐ったりするのも怖いしね。 井口 この灼熱に家に置いてあるものなんて絶対ダメですから。 飯塚 3大怖いがあるね。火と刃物と菌。 井口 だから世の中の料理している方々には本当リスペクトです。やっぱ熱いんで。僕、火がけっこう苦手かもしれないです。 飯塚 火を怖がるって、獣じゃん(笑)。 井口 鍋のこのへんからちょっと火がはみ出したりとか、水が垂れた瞬間にジュワ!ってなるのとかが怖いです。もちろん油なんて無理。はねるから。 稲田 8月のお笑い関係ないやん。「料理は熱い」ってまとめ、何?(笑) ■ プロフィール □ 紅しょうが(ベニショウガ) NSC大阪35期生の熊元プロレスと33期生の稲田美紀が2014年に結成。よしもと漫才劇場を拠点に活動したのち、2023年4月に東京進出した。同年12月に「女芸人No.1決定戦 THE W」優勝。結成10周年を記念する単独ライブツアー「みんなー!津々浦々お疲れさん!」を2024年8月から9月にかけて開催。ラジオ関西のポッドキャスト「紅しょうがは好きズキ!」毎週月曜23時頃から配信中。吉本興業所属。 紅しょうが単独ライブツアー(東京公演) 出張!ご当地タンクトップキッチン 日時:2024年9月15日(日)10:40開場 11:00開演 12:00終演 会場:東京・ヨシモト∞ホール 配信チケット みんなー!津々浦々お疲れさん! 日時:2024年9月15日(日)18:30開場 19:00開演 20:00終演 会場:東京・ルミネtheよしもと 配信チケット □ 井口浩之(イグチヒロユキ) 1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年から2014年に「THE MANZAI」認定漫才師。「M-1グランプリ」では2020年に初の決勝進出を果たし、2022年に優勝! ラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeなどで配信中。とろサーモン久保田とのレギュラー番組「耳の穴かっぽじって聞け!」(テレビ朝日)は毎週火曜26:34~。タイタン所属。 □ 飯塚大悟(イイヅカダイゴ) 1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」「クレイジージャーニー」(TBS)、「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)。 ※記事初出時より本文を一部変更しました。