「夫に監視されてる…?」9歳年下の妻に、還暦夫がしのばせた「あるモノ」。疑惑が招く思わぬ結末
束の間の、妻オフ……遮ったものとは?
「そんなんで、今日、よく1泊旅行になんて出てこられたよねえ」 晶子と沙織がやや引いたようにこちらを見る。 上品なフレンチコースをいただいたあと、箱根のホテルのバーで、私たちはゆっくりとカクテルを飲んでいた。和食が好きで、お酒は飲めない悟志さんと一緒の旅行では、フレンチはなかったし、バーに行くこともなかった。 「それが、とってもラッキーなことにね、今日、あの人も大学の同窓会があるのよ。最初は行かないつもりだったみたいだけど、同じ時期に病気になって快復された親友に熱心に誘ってもらって。本当に良かった!」 「あはは、そういうわけね。でもさ、夫がじっとり家で待っていると思うと、気が咎めて思い切り楽しめないもんね。よかったね、朋子。今夜は羽を伸ばしちゃおう。私も子どもたちを見ていてくれるパパに感謝だわ」 「やれやれ、大変ね、50にもなって、たかが1泊家を空けるのもままならないなんて。。結婚、メリットあるの? ほんとに?」 私たちは揃って笑う。束の間の解放感。 「そうしよう! このバー何時までかな? もし閉まっちゃうなら、ワインとチーズでも買ってお部屋で飲まない?」 時計を見ようとスマホを出すと、そこには1件の着信履歴が表示されていた。 「え? どうして?」
小説/佐野倫子 イラスト/Semo 編集/山本理沙
佐野 倫子