中国、地方隠れ債務対策に10兆元 直接資金は米次期政権まで温存か
[北京 8日 ロイター] - 中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、経済のシステミックリスクとなっている地方政府の「隠れ債務」について10兆元(1兆4000億ドル)規模の対策を決定した。藍仏安財政相は一段の景気支援策を今後発表するとした。 隠れ債務と呼ばれる簿外債務と交換するため地方政府の債務上限を今後3年間で6兆元引き上げる。さらに承認済みの4兆元の発行を5年間で債務交換に充てることを認める。 経済への直接資金投入ではないため、中国はトランプ次期米政権の方針を見極めるまで追加策を温存するとの見方がエコノミストからでている。 全人代常務委員会は、地方政府の特別債発行上限を29兆5200億元から35兆5200億元へ6兆元引き上げることを承認した。 全人代金融経済委員会の徐洪才副主任は8日の会見で、隠れ債務の交換は地方債務リスクの解決を狙った措置と述べた。 藍財政相は会見で、地方政府の隠れ債務は2023年末時点で14兆3000億元だと明らかにした。これを28年までに2兆3000億元に圧縮することを目指す。 債務交換は地方政府の金利負担を5年で6000億元軽減することが見込まれる。 藍財政相は、公的部門による売れ残り集合住宅の購入や未開発住宅用地の取得、大手国有銀行への資本注入に向けた施策を打ち出すと説明したが、規模や時期などは明らかにしなかった。 地方政府債務対策としての債務交換は成長安定化に寄与するが経済成長に弾みをつける措置ではない。 上海安放私募基金の調査ディレクター、Huang Xuefeng氏は「予想を超える内容はない」とし「景気減速や土地売却の落ち込みによる財政不足を考えると規模は大きくない。隠れた債務を好感するために資金が投じられる。つまり新たなワークフローが生まれるわけでなく、成長を直接支援しない」と指摘した。 UBPのアジア担当シニアエコノミストは、売れ残り住宅の在庫減と満期を迎える地方融資平台(LGFV)債務の返済には23兆元のパッケージが必要と推計。今回発表された措置は「必要なのは本質的な措置で市場は失望するだろう」と述べた。 ANZのストラテジストは、財政への直接刺激策がなかったことについて、当局がトランプ政権発足の影響を後に考慮する余地を残していることを示唆しているとの見方を示した。 財政相は、製造設備更新の支援強化や、家電製品などの購入への消費者補助制度拡大の方針を明らかにした。 UBPのエコノミストは、消費を直接対象とした財政刺激策が近く実施されるとは思わないと指摘。実現には一段の痛みが必要だとし、「トランプ大統領の方針がより明らかになるまで力を温存する」との見方を示した。