「全員が俺みたいになったら困る」──蛭子能収が語る、若者の“蛭子化”
全員が俺みたいになったら困る
“飲み会スルー”“ブランド離れ”“SNS断捨離”……考えてみれば、昨今の若者の行動は蛭子に似てきている。 「ははっは。そうか……。でも、全員が俺みたいになったら困る。きちんとしている人も必要ですよ。どんな行動を取るにしても全て、その人の自由だと思います。飲み会も行きたい人は行く、そうじゃない人は断ればいい。でも、『行っといたほうがいいかな……』って遠慮するからね。最近は、1人が行くと、みんなが同じ行動を取るようになる気がする。極端に傾きがちですよね。どっちかに偏るんじゃなくて、本当の意味で個人の意思が尊重されるようになればいいんじゃないかな」
「ギャンブルは二度とやらない! 賭けてもいい」
2019年12月25日、『太川蛭子の旅バラ』が終了した。07年に始まった『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(ともにテレビ東京系)以来、12年間も苦楽をともにしたパートナーの太川陽介と会う機会もなくなる。寂しさが募るのではないか。「そうですね……。別に、それは……(笑)」。ニコニコと笑い飛ばすあたり、いつもどおりの蛭子である。 蛭子には、数多くの伝説がある。 「競艇必勝法を編み出した」という理由で消費者金融に融資を求めたが、妻に保証人を断られて実現しなかった……。税務署に舟券を経費として提出したが、認められなかった。父親の葬儀の直後、兄とともにパチンコ屋に行こうとしたら、義理の弟に叱られた……。賭けマージャンで逮捕された際には「ギャンブルは二度とやらない!賭けてもいい」とぽろり――。
普通なら、たとえ実行したとしてもイメージを気にして話自体を封印するはずだ。なぜ、蛭子は自分の気持ちに正直に生きながら、取り繕うことなく語れてしまうのか。 「ズルいところもありますけどね。競艇で勝ったのに、負けたと言ったりとか(笑)。まあ、正直なほうだとは思います。みんな、人からどう見られるかをすごく気にしているし、恥かくことを極端に恐れていますよね。何かを隠そうとして嘘をつくと、バレたときにもっと恥ずかしくなる。俺にも自分をよく見せたい気持ちは多少あるんですけど、それは難しいですよ」 下手に嘘をついて、取り繕うと、後にもっと苦しくなる。当たり前とも思える言葉だが、不思議と説得力を持つ。昨今の芸能界を取り巻くスキャンダルがオーバーラップする。 恥を怖がらない蛭子にとって、人生で最も恥ずかしかったことは何か。 「あごが外れたことですね。立ち食いそば屋で『デカいなり』を一口で食べようとしたら、ガクンとなってしまって……。全然しゃべれなくなるんですよ。恥ずかしくて、顔も上げられなかった。10分くらい経って、ようやくハメられました。俺のことをずっと見ている人がいましたね。『すみません、あごが外れたんですよ』と説明したのに、何の反応もしてくれなかったんですよ(笑)。本当に恥ずかしかった。その時はつらかったけど、話のネタにはよいなと思いました」