高齢者たちにダンスを教える元海外協力隊員 「子どもたちの希望になってほしい」その思いを抱き奮闘するわけに迫る
原動力となるのは子どもたち
「僕という人間をべりべりと剥がしていくと、教育への強い思いが出てくるはず」という佐々木さんは、大学卒業後、小学校教員として働いていた。しかし、教壇に立っていると、子どもたちに教えるには、自身の器の小ささや経験値が足りないことを痛感した。当時の職場にたまたまいたJICA海外協力隊経験者の教員に、協力隊での活動の話を聞き、協力隊に参加すれば自分を成長させることができるのではと思い、応募を決意した。 2015年、小学校教育の職種で、中米のエルサルバドルに小学校教員の指導能力向上を目的として派遣された佐々木さん。当時、活動地を何度も変更せざるを得ないほど現地は情勢不安であったが「エルサルバドルの子どもたちの方が生き生きとしており、日本の子どもたちの方が、どこかで不安を持っているような印象を持った」と語る。また、老若男女問わず踊りたいときに楽しく踊る姿や、ゆったりと余裕を持って時間を過ごしている同僚の教員たちと過ごすなど、自分の当たり前が他人の当たり前ではないことを常に意識させられる日々を送っていた。こうした海外での経験や刺激は、確実に今の自分を形成する一部となっていると言う。 帰国後、再び教員として5年半務めたが、学校以外にも多様な選択肢があることを子どもたちに伝えたいという思いで、現在はフリースクールの運営に関わっている。フリースクール「こ・ラボ」が教育委員会の認可校となり、子どもたちがフリースクールに来れば、出席日数としてカウントされるようになったことに嬉しさをにじませる。 「子どもたちには、周りを見渡せばこんなフリースクールもあるんだと、色々な選択肢の存在を知ってもらい、それぞれが通いやすい場所を見つけてほしい」と、子どもたちが希望を持って人生を歩めることが何よりも大事であると考えていることが、話の節々に伝わってきた。
目標は高齢者と一緒に世界でダンスをすること
今後の展望の一つとして、子どもと高齢者の間のつながりを作っていくための計画を進めている。すでにダンス教室のレッスン料の一部を子ども食堂に寄付する仕組みを取り入れており、子どもと高齢者が一緒にダンスをする機会を作ろうとしている。また、フリースクールに通う子どもたちに介護体験をしてもらうことも予定しているそうだ。 「子どもたちに口だけの大人だと思われたくない。僕はカッコつけなんですよ」と笑う佐々木さんの活動の勢いはまだまだ止まらない。来年には65歳以上のダンスチームを引き連れて東京のダンスイベントに参加することを決めている。そして、5年以内には必ずどこか海外に行き、公園でもどこでもいいから高齢者が元気に楽しくダンスする姿を見てもらうと意気込みを見せている。世界に飛び出して踊る高齢者たち。歳を重ねることが楽しみになる程のインパクトを、子どもたちだけではなく、すべての年齢層に与えてくれるのかもしれないと思うと、待ち遠しくて仕方がない。
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