母の恨みの遺言 「長男に遺産はびた一文、渡したくない」
皆様、こんにちは。「ラストメッセージ」というデジタル遺言サービスを提供している山村幸広です。私はデジタル遺言サービスを通じて、さまざまな相続の形を見てきました。中には「もっとうまくできたのでは」というケースもあり、日々、「正しい遺言の残し方」を研究しています。 「いざ」というときは、誰にでも訪れます。そんなときでも慌てず、大切なご家族やお子様などに迷惑がかからないようにするには、どうすればいいか。本連載では事例を基に、私なりのアドバイスを提示できたらと思っています。 さて、今回紹介する事例は、「長男に遺産はびた一文、渡したくない」というもの。何やら不穏な空気を感じますね。さっそく見ていきましょう。 ※紹介する事例は、事実を基にしていますが、登場する人物名、家族構成ともに実在しません。 ケース1 長男に遺産はびた一文、渡したくない 遺言者 母:山田芳恵(75歳) 相続人 長男:正男(48歳)、嫁:房子(39歳)、息子:空(9歳) 次男:浩一(42歳)、嫁:あゆみ(35歳)、娘:桃子(12歳)、息子:太一(8歳) 財産 現金(約1億円、全て銀行預金)/持ち家(時価約5000万円) 山田芳恵さん(75歳)は現在、夫に先立たれ、一人暮らし。夫が残した遺産を含め、貯金は約1億円余りあります。住んでいる家は、土地を含めて5000万円ほどの価値があるそうです。 そんな芳恵さんには、2人の息子がいます。正男さん(48歳)と浩一さん(42歳)です。2人とも20代で巣立ち、家族を作って都心で暮らしています。芳恵さんは健康面も大きな問題はなく、はたから見れば悠々自適な暮らしをしているように見えます。けれども、1つ大きな悩みを抱えています。長男の嫁から受ける仕打ちが許せないのです。 長男の嫁・房子さん(39歳)は、普段から金遣いが荒く、ブランド品を買いあさるほか、友人と頻繁に高級レストランで食事を取るなど、散財が目立ちます。一方で夫の正男さんには、すずめの涙ほどの小遣いしか渡しません。主婦で家事はしっかりこなすものの、夫と息子には厳しく、冷たい態度を取るそうです。正男さんは嫁に対して不満を持つものの、本人に直接、苦言を呈す度胸はないようです。芳恵さんは「嫁のいいなり」と見ているようです。