高血圧、「上が高い人」と「下が高い人」では何が違う?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください! ●「高血圧」に関する問題 【問題】高血圧には「上の血圧だけが高い」「下の血圧だけが高い」など、人によってさまざまなタイプがあります。それらに関する説明のうち、正しいものはどれでしょう? (1)「上の血圧」は、血管が硬いほど高くなる (2)「下の血圧」が高い人は、高齢者に多い (3)診察室などで血圧が上がる「白衣高血圧」は、一時的なので心配はいらない
正解は、(1)「上の血圧」は、血管が硬いほど高くなる です。 ●上の血圧は動脈硬化や塩分のとりすぎで上がる 年齢とともに上がっていく血圧。男性は50歳、女性は60歳を超えると半数以上が高血圧に該当するという調査もあります。一口に高血圧といっても「上の血圧だけが高い」「下の血圧だけが高い」「健康診断では高めに出るのに、家で測ると正常」など、いろいろなタイプがあり、それぞれのタイプに合ったセルフケアや治療を行うことが重要です。 上の血圧(収縮期血圧)が上がる主な原因は、血管の硬さ(動脈硬化)です。「しなやかな血管は、心臓から血液が送り出される収縮期には、その圧力を緩めるためにやわらかく膨らみます。ところが、柔軟性や弾力性が失われ硬くなった血管は、いわば土管のようなもので、伸縮することができません。そのため、血管壁にかかる圧力を逃すことができず、血圧が上がってしまいます」と、製鉄記念八幡病院理事長の土橋卓也氏は説明します。動脈硬化は加齢とともに進むため、このタイプは高齢者に最も多く見られます。 上の血圧が上がる要因には、心臓から送り出される血液の量(心拍出量)の増加もあります。送り出される血液の量が多いほど、血管に与える圧力も高まるわけです。心拍出量は塩分のとりすぎや緊張によって増加します。 硬くなった血管をしなやかにするためには、ウォーキングなどの有酸素運動が有効です。また、心臓から送り出される血液の量(体液量)を減らすという観点では、減塩も重要です。 ●下の血圧は肥満や睡眠時無呼吸症候群などで上がる 一方、下の血圧(拡張期血圧)が上がる主な原因は、肥満です。下の血圧は心臓が拡張して休んでいるとき(拡張期)の血圧ですが、このとき、末梢の血管は収縮しています。肥満の人は交感神経の働きが活発になっているので、末梢の血管が収縮しやすく、上の血圧よりも先に下の血圧が高くなってくる傾向があるのです。睡眠中にいびきをかいて無呼吸の状態が繰り返し起こる睡眠時無呼吸症候群がある人も、下の血圧が上がりやすいことが分かっています。下の血圧は高齢になると下がっていくことから、下の血圧が高い人は、肥満の人、若年者・中年世代に多いのが特徴です。 下の血圧を下げるためには、肥満の解消が大切です。また、肥満がある人は食塩の影響を受けやすく(食塩感受性が高く)、ほかの人と同じ塩分量をとっても血圧が上がりやすくなるため、減塩も必須と言えます。下の血圧は薬では下がりにくいため、生活習慣の改善がより重要となります。 「中高年で下の血圧が高く、肥満があったり、心拍数が1分間に80回以上あったりするような人は、睡眠時無呼吸症候群が潜んでいる可能性があります。睡眠時無呼吸がある場合は、そちらの治療を受けることで血圧も下がってきます」(自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授の苅尾七臣氏) ●白衣高血圧は高血圧の始まりと考える なお、高血圧の中には、診察室や健康診断で測ると高いのに、家庭で測ると低くなるタイプの高血圧があります。白衣を着た医療者の前で血圧が上がることから「白衣高血圧」と呼ばれており、診察室などの環境に対する緊張によって、一時的に血圧が上昇することが原因と考えられています。 白衣高血圧はすぐに治療が必要な高血圧ではないものの、持続性の高血圧に移行しやすいことが分かっています。注意深く血圧を観察していく必要があることを覚えておきましょう。 ※この記事は、「『上の血圧だけ高い』『下だけ高い』…高血圧はタイプごとに対処法が違う!」(田村知子=ライター)を基に作成しました。