「月5千円で通える塾」が“金持ちの子だけが賢い”に風穴を開ける? 笑い飯・哲夫の理想から考える“日本の教育につける薬”
お笑いコンビ「笑い飯」の哲夫(49歳)は、2010年に若手漫才師日本一を決定するM-1グランプリで優勝し、テレビや舞台をはじめ、「般若心経」を解説した本がヒットするなど、幅広い分野で活躍する人気お笑い芸人だ。 【映像】芸人の先生も? これなら成績伸びそう!…笑い飯・哲夫の塾の様子 しかし、彼には「塾の経営者」というもう一つの顔がある。
大阪・淀川区にある「寺子屋こやや」は、学校の授業を補習する塾として運営している。放課後の時間に訪れると、黙々と勉強に取り組む子どもたちの姿が見られる。この塾では、小学校3年生から中学校3年生までが対象で、それぞれの生徒が算数や国語など自分の勉強したい教科に取り組む。ここでは、分からないことがあれば講師に尋ねることができる補習塾形式となっている。 この塾の特長の一つは、その料金が一般的な塾と比べて非常に安いことだ。料金は月1万5千円~1万6千円ほどに設定されているが、大阪市の塾代助成制度を利用すれば実質5千円~6千円で通うことも可能だ。 笑い飯・哲夫が格安塾の経営を始めたきっかけは、10年以上前の事務所社員との会話だった。社員の子どもが小学校高学年で月6万円も塾代がかかるという話を聞き、高額な塾代が経済的に高所得者層だけのものになっている現状に疑問を感じたのである。 芸人を志す前から教育に関心があった笑い飯・哲夫は、経済的な事情で塾に通えない子どもの存在を知り、行動を起こす。彼の理想は「ある程度みんなが“そこそこ賢い層”に育っていくこと」。そのためには格安の塾を提供したいと考えるようになった。そして、2012年、M-1グランプリの優勝賞金を元手に大阪で格安塾の経営を始めた。 「寺子屋こやや」の講師には、世に出る前の芸人たちがアルバイトとして関わっている。面白おかしく、堅苦しくない方法で教えることで、子どもたちは楽しく勉強できるという。この経験は、芸人たちにとっても“一番笑かしにくいお客さん”に対する話芸の訓練につながる。 笑い飯・哲夫は、自身の利益を二の次にしており、子どもたちが賢くなることを自らの利益と考えている。彼は、塾の経営を通じて子どもたちに明るい未来を託す。 「若い頃から地球温暖化に関心があり、なんとか『地球を冷ましてくれる装置』を発明してくれーって。でも、全体的に賢くなってくれないとそういう装置を産もうという雰囲気にならないのではないか。いろんな子たちが賢くなって職業を選べるとか、若い世代の人たちにたくさんのチャンスが訪れないといけない」