生命保険信託とは? 利用上の注意点を解説
自分に万が一のことがあった場合、残された人に必要なお金を確実に渡したいと多くの方が考えているでしょう。有効な方法の1つが生命保険を利用した保険金の支払いで、保険金は固有の財産として確実に受取人へと渡ることになります。 ただし、例えば受取人が未成年者であったり、障害者や認知症という場合には、大きな金額の保険金が一括で渡ることに不安も感じるでしょう。このようなケースで選択肢になるのが「生命保険信託」です。 この記事では、生命保険信託の概要や利用上の注意点などを確認していきます。
生命保険信託とは
生命保険信託とは、信託銀行などを保険金の受取人(受託者)として生命保険を契約し、被保険者が死亡した際に信託銀行などが受け取った保険金を、生前に指定した人(受益者)に、あらかじめ決めておいた方法や時期に応じて支払う仕組みのことです。 最大の特徴は、一般の生命保険では保険金の受取人が原則、配偶者と2親等内の血族に限られることに対して、受取人を自由に設定できる点です。また、支払時期や支払方法についても自由に指定することができます。 そのため、自分に万が一のことがあったときに、保険金を渡したい遺族(受益者)が未成年の子どもという場合のほか、障害者や認知症であるなど、財産の管理能力に不安があるケースでは有効な手段の1つといえるかもしれません。 さらに、信託銀行などが管理する財産(信託財産)について、一部払出しや支払条件の変更を行える指図権者を決めておくことができます。例えば、信頼できる親族などを指名し、あらかじめ指図権者とすることで、より安心して財産の管理を任せられます。
生命保険信託の利用事例
生命保険信託の具体的な利用事例には、以下のようなものがあります。 (1)定時定額の支払い 一般の生命保険の保険金は、一括または年金での受け取りとなりますが、生命保険信託では信託銀行などから保険金を受け取る受益者が未成年の子どもなどになることを想定しています。 そのため、例えば「月々の生活費として毎月○日に20万円を子どもの面倒を見てくれる人の銀行口座に振り込む」と設定しておくことで、信託銀行などが設定どおりに定時定額の支払いを実施してくれます。 (2)支払時期を指定 未成年者である子どもに保険金を渡したい場合には、「受益者が成人してからお金を渡す」など、支払いを開始する時期をあらかじめ指定しておくことができます。 (3)受益者の順番を指定 例えば、最初に保険金を受け取る者(第一受益者)は配偶者、第一受益者が亡くなった場合には子どもを第二受益者とするなど、あらかじめ受け取りの順番を設定しておくことができます。 なお、残した財産を広く社会に役立てたいと考える人もいることから、指定した公益法人への寄附を設定できる生命保険信託もあります。 そのほかにも、事実婚の配偶者やその子どもがいる場合や、事業を特定の人に継承させたい場合などに、生命保険信託で受益者を指定する方法をとることもできます。