岐路に立つ町内会・自治会 品川区が条例化に乗り出した理由とは?
私たちの暮らしの中でもっとも身近な行政単位は、市区町村と呼ばれる基礎的自治体です。基礎的自治体には選挙で選出された首長と議会が存在し、市長と市議会は日々の暮らしに欠かせないゴミの分別・収集から、米軍基地開設の許認可権限まで有しています。国会議員や都道府県知事と比べると、ニュースなどで注目されることが少ない市長ですが、私たちの生活に直結するという意味では大きな権限を有しているのです。 市が大きな権限を有しているとはいえ、市内のすみずみまで目を行き届かせることはできません。行政の手の届かない仕事を補完しているのが、各地域に存在する町内会と呼ばれる組織です。町内会と呼ばれる組織は、住民たちの自主的な組織のために、統一した正式名称はありません。地域によって、そのため、地域によっては自治会・町会などと呼ばれていることもあります。
町内会加入率低下に危機感 加入促進する条例制定の動きも
私たちが生活する上で、町内会は大きな役割を果しています。住民の自発的かつ自主的な組織でありながら、本来なら行政が担当する仕事を町内会が肩代わりしているケースも多く見られます。また、地方自治体のお知らせなどは町内会を通じて各家庭に周知されているケースも少なくありません。行政には頼もしい存在になっている町内会ですが、その加入率は年々、低下しています。 このまま町内会に加入する人が減ってしまえば、町内会は機能しなくなります。町内会が機能不全に陥れば、地方自治体の仕事にも大きく支障が出るでしょう。それだけに、町内会の加入率低下は、行政にとっても大きな悩みになっています。危機感を募らせている地方自治体も多く、町内会の加入を促進する条例を制定する動きも出てきているのです。
品川区は新住民増加 町会の位置づけ明確にするための条例化
今年4月、東京・品川区は「町会および自治会の活動活性化の推進に関する条例」を施行しました。品川区内には町会・自治会が203あり、活発に地域活動をおこなっています。品川区の町会加入率は、2015(平成27)年4月時点で59.4%。都内のほかの自治体と比べても、品川区の町内会加入率は決して低くありません。町内会の活動が低調になり、活性化させる目的で条例を制定したのならば、理解もできますが、品川区は決して町内会の加入率が低いわけではありません。なぜ、条例を制定したのでしょうか? 品川区地域振興部地域活動課の担当者は、こう話します。 「近年の品川区は、高層マンションが立ち並ぶようになって人口は増加しました。新住民が増える中、2年前に町会のあり方を考える研究会を立ち上げました。同研究会は条例制定を目的に発足したものではありません。しかし、議論の中で町会の位置づけを明確にする必要が出てきたのです。そのため、“強制加入にならない”といった内容を盛り込んで、活動を推進する条例を制定することになったのです。」