岐路に立つ町内会・自治会 品川区が条例化に乗り出した理由とは?
地域連絡調整員選任のみ、マンション事業者に義務
条例では品川区の責務を定めていますが、区民や町会、マンション事業者に対しては“お願い”という形で協力を求めるにとどめています。 「昨今、高層マンションなどはオートロックになっているため、マンションに立ち入ることができないようになっています。そうなると、町への加入呼びかけに行ったり、行事のおしらせを届けることもできません。これでは町会活動に支障が出てしまうので、必要な範囲内で、マンションの共用部分に立ち入りできるようにお願いをしました。ただ、条例では一項目だけ、マンション事業者に義務を課しました。それが、居住者と住民との交流を促進する地域連絡調整員を選任することです。地域連絡調整員という窓口ができたことで、町会との連絡や調整が円滑になっています」(同)。 品川区が条例制定に際して、“お願い”にこだわったのは理由があります。全国にたくさん存在する町内会は、実は法的な位置づけが曖昧なのです。町内会の権限や機能を明記している法律はありませんので、あくまでも自主的な組織でしかないのです。自主的な存在であるがゆえに、逆に行政にも監督権などはなく、行政が町内会活動に対して強制的に介入することはできません。 自主的な存在である町内会は、その一方でゴミの分別や収集、街の清掃や緑化、防犯、防災、交通安全、地域コミュニティ形成のためのイベント開催など、担っている仕事は重要かつ多岐にわたります。町内会は、時に行政がやらなければならない仕事もこなしています。 自主組織という曖昧な存在で、近年は加入率の低下とともに存在感が希薄になりつつある町内会ですが、住みよい街にするために行政にとっても住民にとっても欠かせない存在であることは変わりないようです。 小川裕夫=フリーランスライター