なぜ今ベーシックインカムなのか 第1回:社会保障制度の“限界” 同志社大学・山森亮教授
■生活保護は「例外」
では学生たちは、なぜ事実と逆に、不正受給者の方が多い、と思い込んでしまうのだろうか。また制度の趣旨からすれば、必要なのに受けることができていない人が多いのだから、受給者を増やさなければいけないはずである。それなのに、どうしてこの社会は、受給者の削減を目指すのだろうか。
日本の社会保障の制度は、戦後の福祉国家建設の時期に、イギリスの制度から学んで導入された。(先に上げた捕捉率はじめ、イギリスでは医療が無料であること等、両者のあいだに異なる点は多いが、それでも)両者に共通するのは、私たちの暮らしを守る社会保障制度は、私たちが保険料を支払って必要な時に保障を受ける「社会保険」が幹で、生活保護のような制度はあくまで社会保険での保障からこぼれ落ちてしまう少数の人を対象とした一時的で例外的なものだという考え方である。第二次大戦中にこうした制度の青写真を描いた経済学者の名にちなんで、ベヴァリッジ・モデルとも呼ばれる。 実はイギリスでも、半世紀以上続いたこのモデルは限界に来ていると考える人たちがいる。そのうちの一人、ガイ・スタンディング教授(ロンドン大学)が、13日から19日にかけて横浜で開催される第18回世界社会学会議に出席するため来日する。彼が提唱するのはベーシックインカムという考え方だ。次回詳しくみてみよう。 ※5回連載。原則、毎週金曜日に掲載予定。