24時間フル稼働で輸送…北京の電力安定のため、内モンゴルの青空は奪われた
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。同じモンゴル民族のモンゴル国は独立国家ですが、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれています。近年目覚ましい経済発展を遂げた一方で、遊牧民の生活や独自の文化、風土が失われてきました。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録するためシャッターを切り続けています。アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。 ----------
シリンホト市から河北省張家口をつなぐ国道207号線は、この地域の交通動脈である。 近年、この国道が通じて、シリンホト市から200キロぐらい離れたシローンフフ・ホショーに建設された中国最大級の火力発電所である上都火力発電所に石炭をトラックで運送している。 ちなみに、この国道とほぼ平行に走る鉄道でも、24時間フル稼働で石炭を運んでいる。そして電力は北京や天津などに送られる。つまり石炭と火力発電所が、この国道と鉄道によってつなげられることで一つのサークルとなり、地域経済を動かすだけではなく、政治の中心である北京の電力安定を担っているのだ。
この発電所も大気汚染や地下水の枯渇など、多くの問題の原因となっている。冬になると煙は町の上空に留まり、青空が望める日は明らかに減っている。 写真でもわかるようにシローンフフ・ホショーの中心の町であるドムドホト・バルガスのすぐ近くに発電所は建設されている。 ある日の朝のことだった。親戚のマンションのベランダに出て、外をながめたとき、目の前の風景に驚いた。その日は火力発電所からの煙が風で流され、町を覆っていた。私が子どものころは冬でも毎日快晴だったが、いまはほぼ毎日、煙に覆われているそうだ。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第6回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。