北陸新幹線の福井県内開業がうれしいとは思わない…賑わいとともに失われるモノ【学生コラム】
人々が速いスピードで四方八方に行き交っている。まっすぐ目的地に行けない。友達と並んでゆっくり話しながら歩くことなど許されない。田舎者は周りのスピードに合わせて歩くことで精いっぱい。私は、人混みが大の苦手である。 福井県で私が不機嫌になるほどの人混みを感じることは、経験上ほとんどない。福井県の中心部、福井駅前の人混みも、都会の人混みに比べたらちっぽけなものだ。人と人との間に空間があるので、ちゃんとまっすぐ目的地に行きつくことができる。基本的に福井県で都会ほど混雑している場所なんてないのだが、中心部でさえ混雑しないのである。 福井県は平日でも休日でも友達とゆっくり話しながら、自分のペースで観光やショッピングを楽しむことができる。騒がしすぎることもなく、空間になんとなく落ち着きを感じられる。これこそが福井県の魅力だと私は思っている。福井県の人々と時間は、のんびりと流れている。この「のんびり感」が好きだ。 しかしながら、福井県にも都会の人混みがやってくる可能性がでてきてしまった。北陸新幹線金沢ー敦賀間開業に向けて、県内の観光地や駅前の開発に福井県は全力を尽くしている。プリズム福井跡地に開業する「くるふ福井駅」には、マックやスタバなど若者の目を引くようなお店がいろいろ出店するらしい。新幹線が開通することも、福井駅前にいろいろなお店が出店することもうれしいことではあるが、これ以上のお客さんが中心部に来ることを私は望んでいない。観光地や駅前の開発に携わり、福井県のために働いてくださっている方々には、心から感謝している。また、私は経済学部ではないので経済について詳しくはないが、きっと観光客が増加することは福井の経済に良い影響を与えるに違いない。 それでも私は、中心部なのに混雑しない福井県が好きなのだ。中心部が混雑していないこと、この心地良さがどれだけ幸せなことか。この幸せが奪われるならば、私がいっぱい買い物をして、観光客が来たのかってぐらい経済を活性化させてやろうかなと思う。まぁ、そんなお金を持ってはいないのだが、福井県民だけで経済を回せる、そんな福井県だったらいいなと思った。 福井に都会のような人混みがやってくることを恐れてはいるが、20年ほど福井県で暮らしている私は知っている。福井県のブームはすぐに過ぎ去ることを・・・。 × × × 福井県立大学の講義「福井の文化と社会」を受講した大学生たちがコラム執筆に取り組みました。今回のコラムは、その中から厳選した作品を掲載しています。