「歯科医はなぜ"足指"の状態を気にするのか?」 40代以降は特に注意が必要!?
「老化は口から」と言われ、近年その重要性が注目されている「デンタルケア(オーラルケア)」。定期健診や歯周病予防、フロスの必要性などが説かれているが、"足(足指)"に注目する歯科医が増えている。足と歯、無関係のように思えるがいったいどういうことなのか。 【写真】歯を安定させる歯根膜 「よく姿勢が悪くて、腰痛や肩こりがひどい人っていますよね?」 白十字柏歯科(千葉・柏)の原田友助院長はこう話す。 「なぜ姿勢が悪くなるかというと、その原因のひとつが足にあるのです。地面に接地しているのは、足。そのバランスが取れていないから、ふくらはぎや太ももでバランスを取ろうとする。すると脚全体に負担がかかります。その負担を分散するために腰や背中、肩など、身体の各所で帳尻を合わせようとして、姿勢が悪くなるわけです。結局、一番基礎となる足のバランスが崩れれば、どんどん体の上部に影響を与えるんです」 確かに足元が不安定なら体全体で調整することになるだろう。しかし、それがなぜ歯に影響するのか。まさか歯でバランスを取っているわけではないはず......。 「猫背など姿勢が悪い人の多くは、頭が肩より前に出て視線も下がり、重心がズレてしまっています。するとバランスを取るのに体全体に力が入るため、歯の『食いしばり』が起こりやすいんです」(原田院長) 食いしばりとは、無意識のうちに歯を強くかみしめること。重いものを持ち上げるなど、力を込める際にする動作だが、それが日中や睡眠中などでも起きてしまう。 「咀嚼(そしゃく)時は30~60kgの力がかかっていると言われています。食いしばりでは、数十キロの負荷が長時間かかるわけです。最悪、歯が欠けたり、割れることもあります。 そこまでいかなくとも、歯と歯茎の間にある歯根膜という繊維に負担がかかります。これが伸びきったり切れたりすると、不安定になり歯が支えられなくなってきます。そして噛み合わせも悪くなってしまうのです」(原田院長) 歯の欠損が健康に悪影響なのはもちろんだが、噛み合わせが乱れると、虫歯や歯周病など口腔疾患、そして全身の健康にも影響があるという。 「電車や喫茶店などでスマホやパソコンを使っている人がいますが、食いしばっている人をよく見かけます。もちろん本人は気づいていませんが、歯科医からすると、なるべく早く治療すべきかと思います」(原田院長) 食いしばりの影響は負荷の蓄積によるもの。今すぐ歯がどうにかなるわけではない。しかし、年を取れば歯茎も痩せていく。若いうちから、負荷をかけないことが大事なのだ。 「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないが、足から歯の健康を損なっていく理屈は分かった。では、どんな足がダメなのか。原田院長はこう説明する。 「足には3つのアーチがあります。かかとと親指の付け根、かかとと小指の付け根を結ぶ縦のアーチが2本、そして指の付け根を結ぶ横のアーチです。このアーチにはいくつか役割があるんですが、そのひとつがバランス作用。アーチが崩れると、歩行中や立っている際に足だけでバランスが取れなくなります」 そして、足のアーチの変形は素人でも確認できるという。