『虎に翼』寅子の「はて?」に、あの時の自分が救われる。戦う場所は違っても、みんなこの地獄を変える仲間だと伝えてくれる物語【第1•2週レビュー】
たとえば日本国憲法公布の報が記された新聞を読みふける橋の下の老女。あるいは、六法全書を手に未来へ夢燃やす寅子のそばで、物思いにふけながらまた歩き出す着物の女性。彼女たちに、役名なんてものはないのかもしれない。だけど、ちゃんと人生があることが伝わってくる。 中でも心震えるのは、少女たちの描き方です。いつも寅子とすれ違う、胸元に風呂敷包みを抱えた女の子。寅子の怒りの『モン・パパ』に乗って席を立ち上がろうとすると、隣の母親にたしなめられる女の子。名もなき彼女たちもまたどこか抑圧を受けているように見えます。 けれど、桂場(松山ケンイチ)に対し「そうやって女の可能性の芽を摘んできたのはどこの誰? 男たちでしょ!」と叱咤したはるの後ろで、その姿を見ていたのもまた制服姿の少女でした。彼女に、はるの言葉はどう届いたのでしょうか。もし彼女が不当な差別で行く手を遮られたときに、はるの言葉が勇気に変わればいいなと願わずにはいられない、そんな描写でした。 そういう意味では、今いちばん気になっているのが、寅子が使っている通りに出てくる小さな女の子。いつも同級生の男子たちにからかわれているのでしょう。第5話では、こらえきれず泣いていました。 いつか彼女がバカにしてくる男の子たちに反論できたらいい。それをヒステリーだの、すぐ女は感情的になるだのとあげつらったら、こう言い返してやりましょう。「自分にその責任はないと? それなら無責任に女の口を塞ごうとしないでちょうだい」と。 すべての女性たちは、自由に、自分の幸せを選ぶことができる。『虎に翼』が描くのは、誰に否定も迫害もされない、十人十色の女性の生き方です。 NHK 連続テレビ小説『虎に翼』 出演:伊藤沙莉 石田ゆり子 岡部たかし 仲野太賀 森田望智 上川周作 土居志央梨 桜井ユキ 平岩 紙 ハ・ヨンス 岩田剛典 戸塚純貴 松山ケンイチ 小林 薫 作:吉田恵里香 音楽:森優太 主題歌「さよーならまたいつか!」米津玄師 語り:尾野真千子 【放送予定】 総合:毎週月曜~金曜8:00~8:15、(再放送)毎週月曜~金曜12:45~13:00 BSプレミアム:毎週月曜~金曜7:30~7:45、(再放送)毎週土曜8:15~9:30 BS4K:毎週月曜~金曜7:30~7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30 ※NHK+で1週間見逃し配信あり 文/横川良明 構成/山崎 恵
横川 良明