渡辺よしみ断言「新しい派閥ないし政策集団ができていくのは確実だ」…石破首相は議員の矛盾・相剋をどう解決するのか
矛盾・相剋をどう解決するか
――石破首相は著書などで「政党法」の必要性を説いています。渡辺氏も政党法制定への思いがあると思いますが、なぜ必要なのでしょうか。 (渡辺氏) 政党法は必要だ。細川護熙内閣の政治改革に欠落していた最大のものは、全国民の代表たる国会議員と政党の拘束を受ける国会議員の矛盾・相剋をどう解決するか、という議論だった。「ミッチー語録」いわく、「派閥の前に党があり、党の前に国家国民がある」。これは「40日抗争」と呼ばれる当時の大平正芳首相と福田赳夫前首相が首班指名で争った時、大平氏を応援して中曽根派を除名された親父が言った言葉だ。自民党総裁選の派閥抗争を首班指名に持ち込むとは何事だ、というわけだった。 全国民の代表たる国会議員は本来、誰の「代理人」でもない。農協、医師会、郵便局、労働組合、経団連、各選挙区など意見は聞いても「命令委任」は受けない。これが近代議会制の「原理原則」だというのは、ミッチーが好んで使った言葉である。 一方、政治改革は小選挙区制と政党助成金で政党中心主義を確立し、中選挙区の結果できる派閥の弊害、つまり「政治とカネ」の問題を解決する趣旨だった。では、この相反する理念をどう調整するのか。その答えが政党法だったのだ。政党助成法は政党法と名打ち、会社に会社法があるように政党のガバナンスを規定する法律にすべきだった。しかし、一部の憲法学者は政党法に猛反対したし、野党の自民党も余計なタガをハメられるのは嫌だったから政党法の議論は回避した。 左派が反対する歴史的背景は、西ドイツが「ボン基本法」のもと、全国民の代表たる国会議員と政党拘束を受ける国会議員との矛盾を徹底議論し、政党法をつくる際、ナチスと共産党を禁止する「闘う民主主義」をとったことに起因する。結社の自由をおかす政党法はまかりならん、とは与野党の共通理解だったと言える。 なお、国民代表制の理念を守るのに法律はいらない。党議拘束を緩和するだけで良い。臓器移植法の時は、共産党を除く全国会議員が自らの思想と信条をかけて可否の記名投票を行った。そういう場面がもっと多くなり、「交差投票」がなされても良いのではないか。
渡辺喜美