BRICS首脳会議に36カ国が参加、グローバルサウスの取り込みに余念ないが隠し切れない「足並みの乱れ」
(舛添 要一:国際政治学者) 10月22日から24日まで、ロシアのカザンで、BRICSの首脳会議が開かれた。今年1月に4カ国が新たに加盟しBRICSが9カ国に拡大してから初めての首脳会議である。今回の会議には36カ国が参加し、そのうち22カ国は首脳級が出席している。 【写真】BRICS首脳会議参加のためロシア・タタールスタン共和国に到着したトルコのエルドアン大統領夫妻。各国代表を歓迎するため用意された現地の伝統菓子「チャクチャク」と「カラヴァイ」に手を伸ばす ■ カザン宣言 23日、首脳会議の全体会議は、カザン宣言を採択した。その内容は、ウクライナに侵攻したロシア、そしてイランに西側から科されている経済制裁を「国際法に反する一方的な」ものとして撤廃を求めるという。そして、その関連で、世界銀行とIMFの改革を求めている。 また、BRICSとの関係強化を目指す「パートナー国」の資格を設けるという。トルコ、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシア、アルジェリア、ナイジェリア、ウガンダ、ベラルーシ、キューバ、ボリビア、ウズベキスタン、カザフスタンの13カ国だという。 そして、「グローバルサウスによる我々への関心を歓迎する」と宣言に明記した。 プーチン大統領は、「我々は政治や経済を含むあらゆる側面で大きな可能性を持ち、団結している」と豪語した。 また、習近平主席は、BRICSを西側に対する防波堤として、多極主義の道を進もうとしている。パックス・アメリカーナに代わる多極世界形成の先導役としてBRICSを位置づけようとしている。
■ BRICSの台頭 21世紀になって、「南」の国々、とくにBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が新興国として存在感を増した。 20カ国からなるG20は1999年に始まったが、これは、G7にロシア、そして当時新興国と呼ばれたアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、サウジアラビア、南アフリカ、トルコを加えた集団である。これら12カ国が、その後目覚ましい経済発展を遂げたことは周知の通りである。 その国々のうちブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国をBRICSと呼ぶが、これらの国々は、2000年以降に大きな経済発展を遂げた。この集団は、南アフリカを除く4カ国で2006年に発足し、2009年には首脳会議を開き、2011年には5カ国のBRICSとなった。「グローバルサウス」と呼ばれる「南」の新興国・発展途上国の代表として、G7に対抗する勢力に成長した。 人口では、G7が約7億8000万人、BRICSが約32億5000万人、GDPでは、G7が約43兆8000億ドル、BRICSが約25兆9000億ドルである。 G20では、議長国がインドネシア(2022年)、インド(2023年)、ブラジル(2024年)、南アフリカ(2025年)とグローバルサウスが連続して務めることになる。