名作朝ドラ「カムカムエヴリバディ」、200曲を超える劇伴はどう生まれた?
◾️「オダギリさんと早乙女さんは本当に一生懸命、完璧だった」
『カムカム』の劇伴制作で最も心がけたことについては、「このドラマって、いわゆる『社会派ドラマ』じゃないし、大仰なことを言うドラマでもないじゃないですか。人々の暮らしや日常を細やかに描いている作品なので、つける音楽もそれに伴って違ってくる。可愛らしくなりすぎても変だし、繊細な音楽でなければならない。僕が劇伴制作で常に心がけたのは、『どの曲もメロディをちゃんと作曲するんだ』ということ。『ただ楽器が鳴っていればいいや』というような、メロディのない曲は1曲たりともないんです」と、こだわりを明かした。 「100年の物語」である『カムカムエヴリバディ』は、「安子編」の1920~50年代、「るい編」の1960~70年代、「ひなた編」の1980~2020年代の3パートに分かれており、それぞれの時代の音楽を反映した劇伴が作られている。今回のコンサートは「安子編」の時代の音楽を中心に構成されるとのことだが、金子は「るい編」の劇伴制作のこぼれ話も教えてくれた。 「いちばん最初に録音にとりかかったのは、『るい編』の『ジョーのテーマ』をはじめとするジョーにまつわる楽曲群でした。ジョーを演じるオダギリジョーさんと、トミーを演じる早乙女太一さんには曲に合わせてトランペットの運指を練習していただかなければならないので、そこから逆算しました」。 続けて、「『るい編』の時代設定である1960年代、ビバップから発展したモダン・ジャズの頃は、ジャズミュージシャンのテクニックがどんどん上がってきた頃合いなんです。だから、手加減できない。俳優さんのために、なるべくシンプルな曲を・・・と思われるかもしれませんが、あの時代にシンプルな曲なんてないんですよ(笑)。なので、オダギリさんと早乙女さんには泣いてもらいながら、頑張って指を合わせてもらいました。お2人とも本当に一生懸命やってくだいました。完璧でしたね」。
◾️「朝ドラ」という大プロジェクトのなかで…追求し続けた日々
また、当時の『カムカム』スタッフチーム全体の空気感についても回顧した。「脚本、演出、カメラ、照明、美術、衣装、メイク・・・スタッフ全員、気概にあふれていました。終わりの見えないコロナ禍に、どうしたら良いものを作ることができるか、どうしたら皆さんに楽しんでもらえるかを、みんな純粋に追求していましたね。朝ドラという、ある種国民的な、大きなプロジェクトのなかでそれを表現できる喜びに満ちていた。そういう時ってなかなかないですよね」と笑顔を見せる。 「だからこそ僕は、音楽を深く深く掘り下げました。そしてまた、掘り下げれば掘り下げるほど喜んでくれるスタッフであり、チームでした。ディテールのリアリティに関しては映画レベルと言っていいのではないでしょうか。とにかく『一生懸命だったな』という思いと愛着が、このドラマにはあります」と、金子はしみじみ語った。 本放送時と同じく、月~金の毎日、半年間オンエアされる再放送。こだわって作られた「音楽」にも耳を傾けながら視聴すれば、さらに『カムカム』の深い世界を堪能できることだろう。 コンサート『「カムカムエヴリバディ」なクリスマス 』は12月24日・25日の2日間、「新歌舞伎座」(大阪市天王寺区)にて開催される。チケットはS席9000円、A席4000円、「新歌舞伎座ネットチケット」にて発売中。