名作朝ドラ「カムカムエヴリバディ」、200曲を超える劇伴はどう生まれた?
2021年から2022年にかけて放送された連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK総合ほか、以下:カムカム)が、今年11月から再放送をスタートした(月~金の昼12時30分~)。重厚な作劇と豊かなエンタメ性を兼ね備えるこの名作朝ドラを語るにおいて、劇伴担当・金子隆博が創り出した「音楽」も欠かせない。 【写真】上白石萌音、深津絵里、川栄李奈が笑顔…「カムカムエヴリバディ」サントラより 奇しくもこのタイミングで、金子がプロデュース・演出を手がけるコンサート『「カムカムエヴリバディ」なクリスマス 』が「新歌舞伎座」(大阪市天王寺区)にて開催されることに(12月24日・25日)。『カムカム』の劇伴制作当時の思いについて、改めて金子に聞いた(取材・文・写真/佐野華英)。
◾️コロナ禍だからこそできた?『カムカム』名劇伴の数々
金子は「自分の思ってもいなかった新しい引き出しを開けてもらった」と当時の気持ちを振りかえり、「『カムカム』の制作がスタートしたのは2019年で、その頃から少しずつ作っていたのですが、2020年4月にロックダウンになって、メインテーマ(註:第1回冒頭から何度となく流れている劇伴)を作りました。日本も含め世界中でたくさんの方が亡くなっていたので、鎮魂歌のような思いをこめたつもりです」とコメント。 また、「ジャズ発祥の地であるニューオリンズのお葬式は、大勢で棺と共に行進しながら音楽を演奏する『ジャズフューネラル』と呼ばれるものですが、そこからインスパイアされたものに、ジャズともゴスペルともつかない自分のなかにあるソウルも入れて、メインテーマを作曲しました。ステイホーム期間は、自分と向き合うのにとてもいい時間だったのではないかと、今では思います。ほかの仕事が全くなくなりましたからね。『カムカム』の劇伴だけに集中することができました」と語った。 コロナ禍に「一点集中」して作られた『カムカム』の劇伴は、200曲を優に超えるという。金子は、「『こんな曲どうですか? こんな曲もどうです?』と、ついつい余計な数を作りたくなってしまって(笑)。コンサートでやりきれないぐらい、まだまだたくさんの曲があります」とコメント。 さらに、「元々、昔のジャズを現代に持ってきてアレンジした『ネオジャズ』というジャンルに興味があったんです。『自分が安子(上白石萌音)の時代に行ったらサッチモ(ルイ・アームストロング)にこういう曲を演ってもらいたかったな』とか、『るい(深津絵里)とジョー(オダギリジョー)の時代に行ったら、ブルーノート・レコード(註:1939年にニューヨークで創設されたジャズ専門レーベル)にこんな曲をプレゼンしたかったな』とか考えながら劇伴を作っていました」と振りかえった。