【回転寿司チェーン戦争2024】「スシロー」「くら寿司」「かっぱ」「はま寿司」の新たなる戦い
「魚べい」「銚子丸」「がってん寿司」「長次郎」も虎視耽々と勢力拡大を狙う ペロペロ事件と原価高騰を乗り越えて、各社はどう儲けるのか?
寿司が画面の中で回っている――。 FRIDAY記者は、「スシロー 新宿西口店」で衝撃的な光景を目撃した。 【画像】すごい…! 指原莉乃や吉本芸人起用…回転寿司チェーン「各社のプロモーション戦略」 自動音声案内に促されて席に着くと、レーンに寿司は一切流れていない。かわりに各テーブルにタテ約50㎝、ヨコ約1.5mの巨大なモニターが設置されており、映し出される「バーチャルレーン」で見慣れた寿司皿が流れていた。 この店舗では、スシローが回転寿司の新たな可能性を探るために開発した「デジタルスシロービジョン」、通称デジローの実証実験を行っているという。 スシローでは昨年、少年が共用の醤油入れを舐めまわす様子をSNSに公開した『醤油ペロペロ事件』が発生し、時価総額は一時、約170億円も暴落した。 「今は持ち直しているものの、衛生面での不安が顧客の心から消えることはありません。そこでスシローは、タッチパネルで注文を受けた寿司を直接席に届ける方式にシフトしたのです。『回転寿司ならぬ″届け寿司″だ』と揶揄されることもありましたが、『デジロー』は、衛生面が確保されつつも、モニター内で流れてくる皿と″偶然に出会う″という回転寿司の魅力を保っている。今後も広がっていくでしょう」(飲食業界新聞記者) 業界1位の641店舗を国内で展開しているスシローだが、’22~’23年は業績不振に陥っていたという。フードジャーナリストの長浜淳之介氏が解説する。 「’22~’23年前半に発覚した生ビール半額キャンペーンのオトリ広告騒動や件(くだん)の『醤油ペロペロ事件』に加え、原材料費高騰による値上げが大きく影響しました。’84年の創業以来変えてこなかった価格を段階的に一皿あたり10~30円上げたのです。 これで安さを魅力に感じていた消費者が離れた。ここ数ヵ月は売り上げが伸びていますが、それは『元に戻った』というだけの話です」 都心型店舗では一皿150円~という強気の値段設定で、スシローは質を追い求める方向へ舵を切った。一皿370円~の「特ネタ大とろ」の売れ行きは順調だ。 王者が大胆な値上げを行ったことで、業界に変革の兆しが現れた。スシロー、「くら寿司」、「はま寿司」、「かっぱ寿司」のいわゆる「四大チェーン」に追従する中堅チェーンたちが躍進しているのだ。例えば172店舗を展開する、「魚べい」の運営元である「元気寿司」は昨年10月末、業績予想を上方修正した。 「魚べいは、いち早く『回らない回転寿司』という概念を提唱した。レーンは注文した商品を運ぶ時にのみ使うのですが、そのスピードが異常に速いのも特徴です(笑)。格安チェーンという位置づけですが、刺し盛りや酒のメニューを充実させ、一人客のちょい飲み需要を獲得することで客単価を上げている。どの店舗にも2割はカウンター席があるんです」(フードジャーナリスト・重盛高雄氏) 魚べいの他には、関東を中心に93店舗を展開する「銚子丸」も業績予想を上方修正した。銚子港で仕入れた新鮮なネタを職人が握って提供する「グルメ回転寿司」の代名詞的存在の銚子丸は、「まぐろ」が一皿352円。他チェーンと比べて高めの価格設定だが、質を重視した消費者が増えたことが好調の要因だと考えられる。 銚子丸と同価格帯の「にぎり長次郎」(関西を中心に展開)や「がってん寿司」(首都圏を中心に展開)、「回転寿司みさき」(関東を中心に展開)も質重視の戦略で着実に業績を伸ばしている。 中堅の突き上げを喰らっている「四大チェーン」も、変化を見せている。 「くら寿司は、″回転する回転寿司″のエンタメ性を追求している。例えば『桃太郎からの贈り物』(115円~)という、中身が見えないようにフタがされた皿を流しています。中には通常2貫の寿司が3貫入っていたり、2皿分の値段に相当するスイーツが入っていたりと、まるで『ガチャ』のようです。寿司がレーンに流れているからこそ楽しめる面白い商品です」(回転寿司評論家・米川伸生氏) くら寿司は、流れる商品が乾かないようにする寿司カバー「鮮度くん」で特許を取得している。カバーがついていることで皿を取りにくいというデメリットが指摘されたが、「醤油ペロペロ事件」で衛生管理がより重視されるようになって以降、圧倒的な支持を集めている。 「最近、ガリが有料になったり、中トロの価格設定を300円~にしたりと原材料費の高騰を受けて客単価を上げようと試みています。ただ、その分、ネタの質も上がっており、中トロも値段に見合った味です。一方で、家族連れを狙っているのだと思いますが、420円のポテトフライは高すぎますね」(前出・重盛氏) 5皿食べると1回挑戦でき、『あたり』が出れば特別な景品がもらえる『ビッくらポン!』は子供に人気。最近では、一皿あたりプラス10円を支払うことで景品が当たる確率を上げることができる「ビッくらポン!プラス」も登場した。味とエンタメ性で家族連れのファンをガッチリ掴んでいる。 はま寿司は格安路線を堅持しつつ、ラーメンやたこ焼きなどサイドメニューを充実させることで差別化を図っている。 「『すき家』などを運営するゼンショーグループの一員だけあって、『直火焼き牛カルビ』(165円)などの肉系の寿司も美味しい。最近は秋葉原に出店するなど、インバウンド需要をこれまで以上に狙っていく姿勢が窺えます」(前出・長浜氏) かつての王者「かっぱ寿司」は、’14年にコロワイド傘下に入ったものの失速。四大チェーンの中では最安クラスの価格を武器にしているが……。 「ネタの質は改善されつつあるものの、安かろう、悪かろうのイメージを払拭できていない。’22年にゼンショーグループ出身の前社長が仕入れ先のリストをはま寿司の社員から不正に入手して逮捕されるなど、自滅から懸命に立て直しているのが現状です」(同前) 回転寿司探究家の柳生九兵衛氏は、「’24年が回転寿司業界の激動の一年になる」と話す。 「これまで四大チェーンは、主に価格で勝負していた。ところが、昨年から『ネタが上質なスシローに』とか、『カバー付きの皿をレーンから選べるくら寿司』、『コスパよく気軽に楽しめるはま寿司やかっぱ寿司』と、″回転寿司のリピーター″ではなく各店のリピーターが増え始めてきたのです。どこが支持を集めるのか。今年の各社の業績が、業界の将来を占うでしょう」 回転寿司業界の新時代が幕を開けようとしている。 『FRIDAY』2024年2月2・9日合併号より
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