BYDが航続距離2100km超のPHEV発表。“マルチパスウェイ”を巡る日中の競争は激化
第5世代DMテクノロジーがPHEVの可能性を広げる
発売が開始された「秦(Qin) L DM-i」と「Seal 06 DM-i」は、内外装の処理が異なるだけで中身はほぼ同じ兄妹車だ。 PHEVに特化した1.5L直4エンジンは単体で74kWの最高出力と126Nmの最大トルクを発生。その熱効率は日本メーカーが得意とする高効率エンジンを大きく上回る。一方、モーターは120kW/210Nmまたは160kW/260Nmの2種類がラインナップされる。組み合わされるPHEV専用ブレードバッテリーは前者が10.08kWh、後者は15.87kWhとなっている。 EHSハイブリッドシステムは、出力密度を従来比で70.28%向上させることでエネルギーロスを削減し、運転効率を92%向上させた。また自動車で初めて、バッテリー、エンジンルーム、キャビン内部の熱を包括的に管理するシステムを採用し、極端な天候下においてもエネルギーを効率良くコントロールすることで無駄なエネルギー消費を抑制するという。 EV走行距離はバッテリーの組み合わせによって異なり、10.08kWh搭載車が60km、15.87kWh搭載車は90km。航続距離は全車全グレードで1回の満タンと満充電で2100kmを実現したと発表されている。PHEVでありながら、燃料タンク容量65Lを確保したのが奏功しているのだろう。ただし、走行距離に関してはあくまでNEDCモードであり、日本などで使われているWLTCモードとは異なる点には留意しておきたい。
日本上陸は未定だが実現すればヒットの予感大
さらに驚異的なのはその価格設定だ。「秦L DM-i」、「Seal 06 DM-i」ともに現地価格は9万9800元(約218万4000円)から13万9800元(約305万9000円)だ。 秦L DM-i、Seal 06 DM-iともに日本市場上陸に関するインフォメーションは現在のところはない。とは言え、EVのSealが今夏に国内発売されることを考えれば将来はわからない。さらに言えば、EVシフトがなかなか進まない日本市場では、むしろPHEVのほうが普及の下地はあるかも知れない。 もっとも日本勢もガソリンエンジンの熱効率改善を着々と進めている。日中の“マルチパスウェイ”を巡る競争は、今後さらに加速していきそうな気配ではある。