【内幕】「すごいなシンゾー!」トランプ氏に伝えた五輪延期 安倍元首相銃撃1年…側近が語る「長期政権の舞台裏」④
■トランプ氏と築いた“信頼関係”
長谷川元首相補佐官 外交全般というのは私が語れるものではないですが、やはりリーダーとリーダーの接触の中で、非常に特色的な事をいくつか感じました。 まずアメリカ大統領について言えば、誰が大統領であろうと、信頼関係なり関係を友好に維持することは、日本の総理の仕事であると強く思っていたかと。どうしてかといえば、同盟国だからです。日本は、いくら周りに脅威が増え、脅威というのは武力や兵器で裏付けされた脅威という意味ですけども、日本の場合は、憲法の求めるところの自衛力として、持てる実力はある種の限界を決めているわけです。その脅威が増えた時に、自衛力を強化するというか、補うものとして日米安保条約があるわけです。 日米安保条約というのは、当然日本の防衛のために作用しているので、安保条約の執行責任者たるアメリカ大統領との信頼関係がなければダメだ、それが誰であろうと、ということは強くありました。 オバマ大統領との関係も、大事に育てていきたいし、トランプ大統領との関係もそうだったわけです。 トランプさんについては、かなり特色がある方だということは、前から分かっていて、そして選挙戦に勝って、2016年11月から接触が始まりますが、どのようにこの人と信頼を作ったらいいのか悩んでいたと思います。 これは外務省のご苦労で、比較的早い段階、2016年11月にミーティングができるとアポイントを取って頂いたものですから、ニューヨークのトランプタワーに行った。 まず話したのは安全保障。特にアジアの安全保障については(トランプ氏は)あまり実感を持っていなかった。 今ある現実の脅威である北朝鮮。そして中長期的に、深刻になる可能性が高い中国。 この2つのある種の脅威。中長期的な脅威をどうマネージして日米がどう役割分担をするかということで、トランプさんといい話が出来た。トランプさんの安倍さんに対する、信頼というのは、そこが出発点なわけです。 ただ、トランプさんは、マルチはだめなんですね。基本的に自分のビジネスが、相手と私というバイ(2国間)だというのがあるんです。アメリカの強みは、購買力もあるし、技術力もあるし、相手の国と2国間で腕相撲するから強いんだと。 それから防衛については、「なんでアメリカがよその国のために、こんなに負担をするんだ」と。NATOだってそうですよね。防衛費をGDP比2%を守ってない国ばかりじゃないかと。 その中で日本の防衛について、アメリカが義務を果たすということを、彼が得心しないと腑に落ちないといけないわけです。 そのために色々なやりとりがあり、そのために、返す刀で反論し、しかし、なかなか癇癪持ちの方ですから、怒らせてもいけない。人を説得する時には、相手側の頷きやすい論法でいかないといけないわけです。 そういう意味で、トランプ大統領は、日本はなぜ自分で自分の国を守らないんだと。ロシアや中国をかつて負かしたじゃないかと。すごい国なんだ日本はと。そういう国のために、何でアメリカは負担をしなくてはいけないのかということを折に触れてでてきたと伺っています。 防衛負担については、やはり日本がもっと日本の貿易対米黒字というのをなくすべきだというパッケージに、トランプ大統領はするんですね。 その問題が別だと言って説得しても無理ですから。なので日本がアメリカの基地機能を一部、日本で提供することで防衛負担はしてると。だから日本がアメリカに防衛負担を負ってもらってるだけではないと。 それから国会で大変な激闘を経て、自分の支持率を大きく減らしたけど、日本の自衛隊はアメリカ軍が日本を守ってくれる限りは、アメリカ軍を一緒に共同して防衛するんだという話を、大きく支持率を落としてもしたんだと、そういう政治生命をかけた話をしたら「なるほど」と言って納得してくれたと。 麻生元総理の言葉を借りれば、外交では、守るべき一線は譲らないという胆力と仰っていますが、胆力を表に出さずに、しかし胆力を発揮するという。人間としての信頼関係ができたわけです。おそらくバイデン大統領の時代に、総理をしていれば、それはそれでバイデン大統領を大事にすると。