京都市動物園の「伊藤若冲の屏風」は今どこに? 米国展示計画も、その結末は
「子どもたちが京都市動物園でつくった若冲の屏風(びょうぶ)がどうなったのか気になります」。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に投稿が寄せられた。投稿者によると完成した屏風を世界に発信すると聞いていたという。計画はどうなったのだろうか。 【写真】伊藤若冲生誕300周年を記念して子どもたちがつくった屏風 屏風は京都市文化芸術企画課が2016年に実施した企画で、江戸時代の画家・伊藤若冲の生誕300年記念事業の一環。同年8月に市動物園(左京区)でワークショップがあり、小中学生ら40人が若冲の作品「鳥獣花木図屏風」をモチーフに鳥や虫といった生き物の絵を10センチ四方の紙に描いて屏風に見立てた壁に貼っていった。完成作品は同月いっぱい園内に展示された。 投稿者の左京区の主婦(57)は、当時中学1年だった次男が催しに参加したといい、完成作品は「世界に発信する」と聞かされていたという。 企画に携わり、屏風を保管していた市動物園によると、海外に発信する計画は存在したという。「手がけた屏風に描かれた多彩な動物から生き物の命の大切さを伝えたい」という趣旨だ。協力した京都嵯峨芸術大(現嵯峨美術大)の教員が米国の博物館と交渉し、実現も視野に入っていた。 だが、資金難に直面した。作品の移送費などに必要な助成金を得られず計画は頓挫したという。以来、園内で保管されてきたが、活用法がなく他の資材も増えてきたため、昨年12月に処分を余儀なくされた。 ただ、作品の写真やワークショップの様子を紹介した園のブログはまだ存在し、雰囲気を伝えている。 当時、副園長で企画に関わった坂本英房シニアアドバイザー(64)は「とても刺激的な取り組みだった。こうした機会を得られたらまた挑戦したい」と振り返る。投稿者は「これまで保管してくれていたことに感謝します。他の子どもたちも同じようなイベントを体験してもらえたら、私たちも当時を思い出せます」と願っていた。