PS5、発売4年で約3万円高騰 度重なる値上げによる“プレステ離れ”加速の可能性を考える
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は8月27日、PlayStation5とその周辺機器の希望小売価格を、日本国内において改定すると発表した。変更時期は2024年9月2日。本稿公開時点ではすでに対応が完了している。これにより、PlayStation 5(ディスクドライブ搭載モデル)は79,980円に、PlayStation 5 デジタル・エディションは72,980円に、ホワイト色のDualSense ワイヤレスコントローラー(以下、DualSense)は11,480円に値上げされた(※)。 【画像】DualSenseコントローラーがついに“大台”突破…PlayStation 5と周辺機器の価格一覧 同社はその理由について、「昨今の世界的な経済情勢の変動などの厳しい外部環境の影響を受けたもの」と説明。PlayStation 5本体に関しては、2022年9月、2023年11月に続き、3度目の価格改定となった。 本稿では、PlayStation 5とその周辺機器をめぐる価格改定の歴史を整理しつつ、値上げがもたらす影響を考えていく。 ※対象製品の一部のみを列挙。以下も含め、価格はすべて税込。 ■ローンチからの4年で3度の値上げ。日本国内における価格は5割増しに SIEがPlayStation 5をローンチしたのは、2020年11月のこと。当初はディスクドライブ搭載モデルが54,978円、デジタル・エディションが43,978円だった。特筆すべきは、日本だけが3度の価格改定すべてで対象の地域となっていること。モデルチェンジをともなった2度目だけに該当した米国では、後者のみが50ドル値上げされるにとどまっているが、3度すべてに該当した日本では、前者で約2万5千円、後者で約3万円も値上げされている。 また、今回の価格改定では2度目に引き続き、周辺機器も対象となった。これにより、DualSenseの希望小売価格は大台である1万円を突破。界隈では、そのインパクトが大きく取り沙汰された。 なお、当初の希望小売価格からの値上げ率は、ディスクドライブ搭載モデルが45%増、デジタル・エディションが66%増、DualSenseが50%増となっている。相対的な比較からは、実数の差とはまた異なる印象が得られるのではないだろうか。 発表を受け、国内の各オンラインストアでは売り切れが続出。こうした動向もまた、PlayStation 5のローンチ時を思わせる、印象的な出来事となった。 ■コントローラー市場に広がる値上げの余波。危惧されるPS5 Proの価格 上述の品切れが値上げ前の駆け込み需要なのか、転売目的の購入によるものなのか、正しく判断するのは難しい。しかし、価格改定が市場に大きな影響を与えたのは、疑いようのない事実だろう。今後はこうした動きの反動で、買い控えが起こると想定される。このような推測から、界隈では対象製品の苦戦につながっていくのでないかという見方もある。 ユーザーのあいだではここ数年、ゲームプレイに使用するハードをコンソールからPCへ移行する動きが強まっている。最近では、各社が開発/発売を手掛けるファーストパーティータイトルでなければ、PCプラットフォームでも同様にソフトがリリースされるケースも増えてきた。そのため、メーカーのしがらみを越えてソフトを選べ、かつ周辺機器のバリエーションが豊か、他の用途にも使えるゲーム機としてのPCの需要が高まりつつある。特に強力な自社IPの数に乏しく、機能性の面でも同列に語られやすいPlayStation、Xboxにとっては、PCという第三の選択肢が売上やシェアを伸ばすうえでの脅威となっている現状がある。 今回の価格改定によって、PlayStation 5本体は7万5千円前後まで値上げされた。ただでさえコンソールには逆風の市場動向のなかで、ゲーミングPCとの価格差が埋まったことは、数字以上の特別な意味を持っていくはずだ。現時点でPlayStation 5と同等のゲーミングPCを用意するためには、15万円強の予算が必要だと言われている。そのあいだにはまだ8万円ほどの開きがあるが、この差をどう見るかは消費者それぞれの考え方によるだろう。少なくともその差が埋まったことで、PlayStation 5をあきらめ、PCへと流れるユーザーがさらに増える可能性がある。 他方、本体とは別の部分で影響が大きいと考えられるのが、コントローラーの市場に対してだ。PCにおけるゲームプレイでは多くの場合、各ハード向けに展開されているさまざまなコントローラーが使用できる。SIEやMicrosoft、任天堂が販売する純正機は、サードパーティーの製品と比較して機能性に優れているため、同プラットフォームを主戦場にするプレイヤーからも広く選ばれてきた経緯がある。 特にMicrosoftが展開するXbox ワイヤレスコントローラーは、操作性やデザイン面でのカスタマイズ性から“定番”の位置に君臨してきた。SIEにしてみれば、DualSenseや(PlayStation 4向けの純正コントローラーである)DUALSHOCK 4にその対抗馬としての役割を期待している面もあったはずだ。 今回の価格改定では、DualSenseとともにDUALSHOCK 4も、6,578円から7,980円へと値上げされている。上述の市場の状況を考えると、SIEは今後、PCプラットフォームにおけるコントローラーのシェア争いでも劣勢に立たされる可能性が高まったのではないだろうか。 また、界隈では遠くない未来に、PlayStation 5のアップグレード版にあたるPlayStation 5 Pro(仮称)が発表/発売されるのではないかと噂されている。当然ながら、機能拡張を盛り込んだ同機が現行版より安価で展開されるとは考えにくい。少なくとも8万円台、場合によっては9万円台での発売となるのではないか。ちなみにPlayStation 4とPlayStation 4 Proのケースでは、同スペックの前者が37,778円で発売されていたタイミングで、後者が48,578円でローンチされている。これと同等の価格差(税抜の希望小売価格で+1万円)と推定すると、ディスクドライブ搭載モデルは90,980円、デジタル・エディションは83,980円となる。いよいよ10万円の大台が見えてくる格好だ。 値上げがもたらす影響はいかに。日本市場において長く権威を示してきたSIEがいま、大きな岐路に立たされている。
結木千尋