【2024年を振り返る・ロシア編】インドへの原油輸出で外貨を稼ぐロシアだが、印ルピーで買うモノがない問題に直面!
■ 堅調に増えたインド向け輸出が物語る都合の悪い事実 まず輸出面の動きを確認したい(図表1)。最新の2024年第3四半期のデータは、まだ9月分のデータが出ていないため、7-8月期の平均値を3カ月換算したものを用いている。 一見して分かることは、2024年の輸出総額は、2023年に比べても横ばいから減少気味に推移していることである。少なくとも、輸出が堅調だったとはいえない。 【図表1 ロシアの国別輸出総額】 国別には、中国が引き続き最大の輸出先だが、1四半期当たり300億米ドル弱での推移が続いており、拡大はしていない。高止まりしているともいえるが、輸出全体のトレンドから判断して、むしろ足踏みしていると評価した方がいいだろう。 中国側の統計を確認しても、中国景気の低迷もあって、ロシア産の原油やガスの輸入は停滞している。 対照的に、インド向けの輸出は堅調に伸びており、2023年には100億米ドル台半ばだったものが、2024年に入って200億米ドルを超える水準まで増加した。 インド側の統計を確認しても明らかなように、最大のけん引役は原油である。ただ、問題はインド向けの原油輸出でロシアが得る外貨が、インドの通貨ルピーであるということだ。 インドは中国に比べると工業化が遅れており、ロシアはインドから工業品を輸入することができない。つまり、ロシアはインドへの輸出で得たルピーをダブつかせている。中東や南アジアの周辺国を通じて金やハードカレンシーに換金するスキームも整備されたようだが、ロシアにとってルピーの処分はまさに頭痛の種である。 次に輸入面の動きを確認したい(次ページ図表2)。
■ 横ばいの中国に代わってロシアが輸入を増やしている国々 ロシアの輸入総額は2024年第3四半期に660億米ドル程度に回復したが、2023年前半の水準には至っていない。そのため2024年通年では2023年の水準を下回るだろう。つまり、ロシアの輸入は伸び切っていない。米国の制裁による決済の停滞が輸入を圧迫していることはロシア中銀も認めるところだ。 【図表2 ロシアの国別輸入総額】 伝統的にロシアは、国内で不足している工業品を輸入で賄ってきた。 ウクライナ侵攻前まで、最大の輸入先は欧州連合(EU)だったが、ウクライナ侵攻後はそれが中国にスイッチした。2024年も中国が引き続き最大の輸入先だが、その規模は1四半期当たり300億米ドル前後で横ばい。つまり後述のように、ロシアの対中貿易収支は小幅赤字だ。 代わりに、小幅ながら増えているのが、旧ソ連(CIS)諸国からの輸入である。 ウクライナ侵攻前までCIS諸国からの輸入は1四半期当たり70億米ドル程度だったが、侵攻後は80億米ドル程度に、2024年には90億米ドル弱まで増加している。こうした国々は歴史的にロシアの影響力が強いため、ルーブルで決済が行われている可能性がある。 トルコからの輸入も、小幅だが増えている。こうした国々は、米欧が主導する対ロ制裁には加わっていないため、いわゆる第三国からの迂回輸出が行われている可能性が指摘されるところだ。 貿易統計のデータがCIS諸国やトルコからの迂回輸出をどのくらい反映しているか定かではないが、そうした要因も多少は含まれているのかもしれない。 最後に貿易収支である(次ページ図表3)。