受刑者を「さん付け」で“刑務所”は本当に処遇改善できるのか 刑務官がストレスを募らせる理由「1年も経たずに辞めていく新米刑務官も結構います」
懲役刑の実態は「懲役+虐待」
「風邪で高熱が出てても普通に作業させませたし、刑務官に相談しようとすると私語厳禁を理由に懲罰房に送られました。意味分かんないですよ。受刑者は裁判で懲役刑が確定したから服役しているわけですが、懲役刑の実際は『懲役刑+あらゆる虐待』というのが本当のところです。塀の中で自殺した人もいますし、刑務官にイジメ抜かれ、実質的に殺されたような人も結構いましたからね」(Bさん) 刑事収容施設法の施行によって、大きく改善されたのは以下の3点だ。 【1】自由に手紙が出せるようになった 【2】苦情の申立てができるようになった 【3】誕生会のメシが美味くなった 改善の肝と呼べるのは、今のところはこれぐらいだ。そのため今後も見直しを行うとのことだが、服役経験者からすると改善の実感に乏しいというのが率直な感想のようだ。 まず受刑者の名前を呼ぶようになったことについてCさんに聞いてみた。前科11犯のCさんは刑事収容施設法の改正前後に全国各地の刑務所に服役した経験を持つ。 「いくぶんなら雰囲気が良くなったかもしれませんが、結局は、受刑者のことをブタとかバカって呼ぶ職員や刑務官もいますからね。そういうのは日常茶飯事です」
ピントの外れた「さん付け」
ちなみに身体が太っている受刑者を「ブタ」と呼ぶわけではない。刑務所という「塀の中に閉じ込められた奴隷」という意味合いで「ブタ」という言葉を使っている。 さん付けに呼び方を変えても、それで刑務所内の雰囲気が変わり、体罰が減るというわけではなさそうだ。それはそうだろう。受刑者を「さん」と呼びながら、嫌がらせやイジメを行うことはできる。 さらに重要なのは受刑者が「自分たちをさん付けで呼んで下さい」と要望したことは一度もないということだ。処遇の改善を求めて受刑囚が裁判所に訴えた事例がいくつもあるが、その中に「さん付けで呼んでほしい」と求めた裁判はない。 そして監獄法が刑事収容施設法に変わっても、Cさんは刑務官から悪質ないじめ、パワハラを受けたと明かす。 「作業してる時、刑務官がこっちの顔を覗き込んでくるんですよ。作業してるこっちからすれば刑務官の顔が作業の邪魔になるじゃないですか。それで刑務官を見たら『おい、お前、今、作業台を見ずによそ見しただろ』で受刑者は懲罰房送りにされます」 江戸時代は即決死刑も珍しくなかった。だが、自由を奪って拘留する「戸〆の刑」と身体を虐待する刑は、それぞれ別の刑罰だった。一方、現代日本の刑務所では自由を奪う「懲役刑」に体罰も加わっている。これは大問題なのではないだろうか。