中国の不動産バブル崩壊「大都市」と「地方都市」の根本的な違い
● 中国政府の大規模経済対策で 一部の投資家が中国株に過熱 世界の主要投資家は、中国経済の見方をかなり変えてきている。中国政府が9月に出した経済対策の、規模感や発動のスピードを評価しているのだろう。政策発表の影響として、国慶節の連休直前の9月30日まで、中国本土株式市場ではCSI300指数が9営業日続伸した。 国慶節の連休中、香港株式市場は上昇の勢いを保った。特に、不動産関連株の上昇は明らかだ。大手デベロッパーの融創中国控股(サナック・チャイナ・ホールディングス)がその象徴的な存在で、9月23日は1株当たり1香港ドル(19円)だった同社株は、10月2日に4.60香港ドルに急騰した。一部の金融機関では株式購入注文が殺到し、スマホアプリのログインが困難になったほどだ。 一部の投資家は前のめり気味に中国株に資金を振り向けている。空売りの買い戻しを余儀なくされた人も増えた。その結果、9月30日、上海と深セン両証券取引所の売買代金は過去最高を記録した。合計取引額は、約2兆6000億元(約53兆円)に上った。 経済活動にも、それなりの変化は現れた。ゼロコロナ政策終了後、大型連休中の不動産取引は停滞気味に推移していたが、今年の国慶節の連休中は大都市で不動産購入を検討する人が増えたと報道されている。 住宅都市農村建設省によると、50以上の都市が不動産支援策を実施し、1000社以上(案件ベースで2000以上)が不動産販売促進策に参画した。ニュースによると、深センでは、不動産業者が徹夜で顧客対応に迫られたそうだ。 9月前半は、中国の本土株は下落し、経済指標も予想を下回ったことで先行き悲観的な見方が大半だった。しかし、経済指標の発表を機に、主要投資家の一部は一転し、強気な見方が増えた。一時的に中国、香港の金融市場では、群集心理が沸き立ったと考えられる。
● 北京、上海、深センなど 大都市圏では景況感に変化の兆し 今回の大規模な経済対策で、金融市場、特に株式市場を取り巻く雰囲気は変わりつつある。それは、資産の値動きからも確認できる。9月前半、デフレ経済が深刻化する懸念が上昇したことで、主要投資家は本土・香港株を売りに回り、国債を購入した。 一方、9月23日以降、中国の金利は上昇(国債価格は下落)した。国慶節中、香港の国債流通利回りは上昇して終えた。リスク資産から国債に向かった資金は、急激に国債から株式、不動産などに再還流した。 資産効果は、北京、上海、深センなど大都市の景況感を支える要素になるだろう。深センで不動産見学に訪れる人が急増したことは、大都市の住宅価格が徐々に下げ止まり、消費者の心理が変化したことを示唆している。 政策が不動産需要をかさ上げするとなると、建材、建機、建設作業員などの需要も増えるだろう。政策の効果(信認)が続く間、不動産市況は下げ止まり、生産活動などの悪化ペースは緩む可能性はあると考えられる。 大都市圏での不動産在庫の水準も相対的に低い。2020年末と23年末を比較すると、北京、上海、深セン、広州で、住宅在庫の消化に必要な期間は10~15カ月程度に伸びた。大連、天津などの2級都市は、10~20カ月程度に伸びた。3級都市以下(いわゆる農村などの地方都市)は、10カ月程度が30カ月程度に大幅に伸びた(易居研究院のデータ)。 在庫の圧縮時間が短い分、在庫処理の可能性は高いと考えられる。大都市は地方居住者に門戸を開くなど、規制も緩和した。大都市は、経済的な利得確保の機会も多い。北京は政治の中心地であり、上海は金融機関が多い。深センはITスタートアップ企業が多く集積する。今回の経済対策後は、目先、大都市の景況感を下支えする要素になるだろう。