戸松遥「エイリアン」最新作で主人公の吹替声優を担当「『エイリアン』デビューしたい人にもおすすめです」
人気声優の戸松遥が「エイリアン ロムルス」(9月6日から全国公開)日本版で吹替声優を務めた。「ソードアート・オンライン」の結城明日奈役、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の安城鳴子役など、数多くの人気キャラクターを担当していた戸松が演じるのは、主人公のレイン。希望を求めて、足を踏み入れた宇宙ステーション“ロムルス”で、宇宙最強にして最恐の生命体であるエイリアンに立ち向かう役どころだ。作品の見どころや、呼吸を意識したというアフレコ、さらに溢れるサメ映画への愛情も語った。(取材・文/内田涼) 【「エイリアン ロムルス」作品概要】 SFスリラーの金字塔「エイリアン」(1979)の“その後の物語”を、シリーズの創造主であるリドリー・スコットの製作で映画化。光の届かない採掘コロニーで、過酷な生活を強いられる6人の若者たちが、老朽化した宇宙ステーション“ロムルス”に眠る脱出ポッドの奪取を試みるが、そこには人間に寄生し、猛スピードで進化するエイリアンが待ち構えていた――。「ドント・ブリーズ」の鬼才フェデ・アルバレスが監督を務めている。 ●「意識したのは、呼吸のお芝居」息詰まる緊張感を表現 ――戸松さんはもともと「エイリアン」シリーズのファンだそうですね。 そうなんです。「エイリアン」シリーズは昔から全シリーズ見るくらい大好きなので、まさか、声優として関わることができるなんて思っていなかったので、夢のようにうれしいんです。特に印象に残っているのが、小学生の頃に見た「エイリアン4」で、その衝撃的な結末は、子どもながらに「どうすれば、幸せになれるのか?」「共存って何なんだろう?」といろいろ考えさせられた記憶があります。それくらい、インパクトが強い作品でしたね。 ――「エイリアン」の主人公=強い女性をイメージしがちですが、「エイリアン ロムルス」の主人公レインは、ある意味「どこにでもいる普通の女の子」という印象を受けました。実際に声優を担当した戸松さんには、どのように映りましたか? 私も台本を読ませていただき、本当に想像以上に等身大の女の子だなと。ただ、いまいる過酷な環境から脱したいという、目的意識をもった行動力のあるキャラクターでもあるので、そんな芯の強さや、周りにいる大切な存在に対する愛情や優しさを表現したいと思いました。言葉にすると軽くなってしまうかもしれませんが、本当にいい子ですよね。 ――「エイリアン」シリーズの主人公ですから、やはり、不安や恐怖、怒りといったさまざまな感情に揺さぶられるシチュエーションが多かったですよね。 今回、特に意識したのは、呼吸のお芝居でしたね。緊張感が溢れるシーンが多いですし、レインを演じるケイリー・スピーニーさんの、お芝居として必要な息づかいや呼吸というものがあるので、それは絶対に台無しにしちゃいけないという思いがありました。ですから、今回はいつも以上に、耳で聞くようにして、かすかな呼吸も逃さないよう意識をしました。 ――詳しくは明かせませんが、まさに「ドント・ブリーズ」的なシーンもあって、本編を拝見しながら心の中で「最高じゃん!」と叫んでしまったんですが。 私もです! あのシーンは「待ってました!」と思いましたし、さすが「ドント・ブリーズ」の監督さんだなって。すごくうれしかったですね。 ――まさに息詰まるような緊張感で、その状況を声で表現するのは、とても難しいことではないかと思ったのですが。 もう生きるか死ぬか、本当に首の皮1枚でつながっている緊張感ですし、俳優さんの芝居――先ほどの話とつながりますが、やはり息の芝居はすごいので、自分としてもその緊張感に乗っかる形で。気づいたら、自分の顔も、俳優さんの表情と同じ動きになっていたほどで(笑)。瞬きや目の動きもシンクロしていましたし、走るシーンは、思わず自分も腕を振っていたり。それはすごく本作ならではのアフレコだったなと思います。 ●「魂を削りながら全力でお芝居させていただいた」 ――声優としてさまざまなジャンルでご活躍の戸松さん。昨年は「スター・ウォーズ アソーカ」で、印象的なヴィランのシン・ハティを演じていらっしゃいますが、洋画作品の吹替に対して、どんなご苦労や醍醐味を感じていますか? 吹替の経験という部分では、私はまだまだ未熟だなと思うことはありますね。元々アニメの世界から、声優業を始めさせていただいたので、どちらかと言えば、すごく自由に表現してきたのかなと。やはり、吹替は(演じる)役者さんのお芝居ありきですから、そこをいかに生かして、壊さないように表現できるかをすごく意識しますね。感情を乗せただけでは、お芝居は成立しませんし。アフレコのときも、原音を聞きながら声をあてますし、そこはアニメとは決定的に違ってきますね。 ――聞きながら声をあてる、というのが、やはりプロフェッショナルだなと。 この後、何秒経ったら、こうなる――みたいなところまで考えながらのお芝居なので、そういうテクニカルな作業がとても大事になりますね。もちろん、感情も大切にしつつですが、アニメのときは別の頭の使い方をしていると思います。 ――その上で、絶望的な状況に置かれ、内に秘めた強さを目覚めさせるレインをどのように表現しましたか? “ロムルス”に足を踏み入れてからのレインは、弟のアンディ――実際には血はつながってはいませんが、彼だったり、仲間たちを救うためにも、絶対に生き残るんだと決意しますし、表情もまるで別人のようになりますからね。本当にお腹から声を出し、セリフに“圧”を吹き込むことが大切でした。きっとレインを演じたケイリーさんもそうだったと思いますが、私自身も魂を削りながら全力でお芝居させていただきました。途中、酸欠になって、クラっとしてしまうこともあったんです。前半との落差も含めて、ぜひ吹替版を楽しんでいただければうれしいですね。 ●サメ映画への愛が高じて、サメ映画学会の会員に ――“体感型”という言葉がふさわしい作品ですよね。 いきなりエイリアンが登場するわけじゃなくて、ジワジワと恐怖が迫ってくる感覚も、すごく「エイリアン」シリーズらしいなと思いましたし、ご覧になる皆さんには、本当に「最後の最後まで気を抜くなよ」ってお伝えしたいですね。それもまた「エイリアン」シリーズの魅力ですし。私はぜひ4Dの吹替版で見たいと思っているんです。やっぱり「ドント・ブリーズ」の監督さんですから。ポップコーンを食べる手も、ついつい止まってしまうと思いますよ(笑)。 ――ありがとうございます。ところで、戸松さんといえば「日本サメ映画学会」の会員としても知られていますが、どんなきっかけだったんですか? 最初のきっかけは、子どもの頃に見た「ジョーズ」だと思うんですが、あれを見て「サメって実際に海にいるんだ。もう怖くて海には入れない」ってトラウマになってしまって。そこで、海でサメに遭遇しても生き残りたいと思って、サメの図鑑で生態を調べ始めたんです。それがサメに興味をもつきっかけで、その流れでサメ映画が好きになりました。 ――恐怖心が興味に変わっていったと。 ちょっと言葉選びが難しいんですけど、“一流”のサメ映画じゃなくても全然いいというか、それが褒め言葉で。サメ映画を見たことがない人からすると「これで映画として成立しているの?」って言われてしまうようなサメ映画が好きなんですよ。見れば見るほど、マニアックなサメ映画に行きついて。 ――いま、まさにサメ映画は国内外でたくさん製作されていますよね。 そうなんですよ! 特に海外はアツくって(笑)、いろいろなサメ映画がリリースされていくので、これからもサメ映画学会の会員として、どんどん新作を追いかけていきたいと思っています。 ――この夏はサメ映画、そして「エイリアン ロムルス」ですね。 そうです! 「エイリアン」が大好きな私からお伝えしたいのは、「エイリアン ロムルス」は、過去の作品を知らなくても、楽しめるようになっているということ。知識がなくても、置いていかれることはありませんので、「エイリアン」デビューしたい人にもお勧めです。 「エイリアン ロムルス」は、9月6日から全国劇場にて公開。