「これぞオリックス!」開幕ダッシュならずも解説者、他球団スコアラーが評価する2024年の「ナカジマジック」
ごく真っ当な指摘ではあるが、中嶋監督ら首脳陣にしてみれば、日本ハム時代からの吉田の課題を認識し、修正すればボールの威力が上がってくると見ていたわけだ。吉田はキャンプから体重移動をテーマに掲げ、実際、ボールの伸びは変わった。 それでも13日の日本ハム戦は、5対0とリードした場面の9回に登板。二死から1失点し、なおもピンチとなったところで平野佳寿に代わった。まだ4点差あったにもかかわらず守護神を投入したことに、「この試合は絶対に落とせない」という気迫を感じた。そして翌日も平野を連投させ、今季初の連勝を飾った。 「この2連勝は大きかったと思います。7勝8敗と5勝10敗では、チームの勢いはまったく変わりますからね」(前出スコアラー) その一方で、こうも言う。 「中嶋監督は、吉田がシーズンを通して使えればいいと思っているけど、過度な期待はしていないはず。やはり宇田川、山﨑らが本来の調子になってきた時が、戦闘開始のサインと考えているのではないでしょうか」 【交流戦までは無理をしない】 攻撃陣では頓宮だ。昨シーズンの首位打者であり、今季も4番でスタートした。しかし、一時期打率は.045まで落ち込み、8番降格どころか、スタメンからも外れた。 すると中嶋監督は、登録抹消はせずに12日に1日限定でファームの試合に送り出したのだ。その試合(中日戦)は4打数無安打だったが、翌日は再び一軍の試合に8番で出場すると、本塁打を含む2安打と復調の気配を見せた。 「ファームで1試合出場させたことが、どれだけ効果があったのかはわかりません。おそらく気分転換的なものだったと思います。ただ、その日の一軍の試合は伊藤(大海)が先発で、頓宮が苦手とする投手のひとり。中嶋監督は初めから使う気がなかったので、ファームで出場させたのではないですかね」
中嶋監督からすれば、"マジック"にも入らないような起用かもしれない。ただ、選手の状態を見極め、チームに落とし込んでいく。これが野田氏の言う「143試合を俯瞰して戦う」という中嶋監督の流儀である。 前出のスコアラーは言う。 「中嶋監督は、交流戦までは選手に無理をさせず、勝ったり負けたりを繰り返しながら戦っていくと思います。ソフトバンクが独走しないという前提ですが、それまでにいかにしてチームを整えるか。そうした考えの監督だと思います」 開幕から主力の不振が響き、苦しい戦いを強いられているオリックスだが、それでも連敗したのは一度だけ。これこそ中嶋監督の真骨頂と言えるかもしれない。はたして、4連覇に向けてこれからどんな"ナカジマジック"を披露してくるのか、楽しみでならない。
木村公一●文 text by Kimura Koichi