《デニス・サファテの巻》どんな人物か?「神様」です。ナインから「監督待望論」が何度も上がるキング・オブ・クローザー【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】
【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】#35 デニス・サファテ ◇ ◇ ◇ 【写真】《柳田悠岐 #2》人並み以上のスピードとパワーを兼ね揃えていたがゆえの落とし穴 デニス・サファテ(43)はどんな人物か? こう聞かれたら僕は「神様です」と答えます。 ソフトバンク入団1年目の2014年からクローザーとして活躍し、15年からは3年連続最多セーブを受賞。17年の54セーブは、現在も日本記録として球史にその名が刻まれています。この年の日本シリーズ6戦目は3イニングを投げるなど、回またぎや連投も辞さない。これだけ献身的な助っ人は他にいないでしょう。まさにキング・オブ・クローザーです。 人格面も優れており、敬虔なキリスト教徒。親のいない子どもを引き取って養子にするなど、社会貢献活動も行っていました。そんな奉仕の精神を改めて目の当たりにしたのが、16年の熊本地震です。震災の一報を聞くや、すぐさまキリスト教関連の機関や教会を通じて現地と連絡を取り、被災した子どもたちとその保護者をヤフオクドーム(現・みずほPayPayドーム)に招待しました。これはすべてサファテが独力でやったこと。本当に頭が下がります。 そんな性格だからナインから慕われ、後にクローザーを引き継いだ森唯斗(現・DeNA)はサファテから「オレの弟」と呼ばれ、可愛がられていました。 もっとも、サファテが当初、後継者と見定めていたのは岩崎翔(現・中日)。「このチームで今、オレが抜けたら、抑えになるのは岩崎だろう」と話していました。結局、岩崎はケガが多く、森が台頭しましたが、普通、自分がいなくなった後のことまで気にかける助っ人なんていません。 「先発投手を早く降ろすから、そのツケがリリーフに回ってきている。リリーフはみんな疲れている。首脳陣はもっと先発を信じて使ってくれ」 と、工藤監督に采配批判とも取れる苦言を呈したのも、チームを第一に考えていたからです。 そんなサファテの悪口を言う者は、選手やスタッフ、球団職員も含めて一人もいませんでした。むしろ、選手の間では「サファテ監督待望論」があったくらいです。「将来、サファテが監督になるんじゃないの?」「そうなったら最高だよな」なんて会話を聞いたことも一度や二度じゃありません。 だからこそ、大型契約を結んだ直後にケガで離脱し、その後も投げられないまま引退したのは残念でなりません。それまでの貢献度もあり、思ったよりも批判されなかったことだけが幸いです 。 (田尻一郎/元ソフトバンクホークス広報)