小林且弥監督、初監督作品への思い「考えるきっかけになれば」 撮影開始直前のピエール瀧の一言のぼやく
ミュージシャンで俳優のピエール瀧、小林且弥監督が19日、都内で行われた主演最新作『水平線』の完成披露舞台あいさつに参加した。 【全身カット】モノトーンのワンピース姿で小顔際立つ栗林藍希 本作は、福島県のとある港町を舞台に、大切な人ときちんとお別れできないまま立ち止まってしまった、ある親子の物語。主演の瀧は、震災で妻を失い、心に傷を抱えたまま、高齢者や生活困窮者を相手に散骨業を営む主人公・井口真吾を演じ、真吾の一人娘で、水産加工工場で働く奈生役は栗林藍希が演じる。 小林監督は本作が長編映画監督デビューとなる。2001年に俳優としてのキャリアをスタートさせ、主演映画『ランニング・オン・エンプティ』(2010)や『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(2010)、映画『あゝ、荒野』(2017)、テレビドラマ『レディ・ダヴィンチの診断』(2016)など多数出演。2021年に映像プロジェクト集団STUDIO NAYURAを設立し神奈川芸術劇場(KAAT)で舞台『象』(2022)を演出。また、オムニバス映画『無情の世界』(2023)では企画・プロデュースを手掛けるなどプロデューサー、演出家、映画監督と多岐にわたって活躍している。2013年に白石和彌監督『凶悪』で瀧が演じるヤクザの舎弟役で共演し、意気投合。自身初の監督作品となる本作へと発展した。 本作に込めた思いを問われると小林監督は「もともと言えば、僕は役者として、2011年、震災が起きた年に、復興ドラマに役者として参加したんです。そこから今で13年ですか。最初に復興ドラマに参加した時は、石巻、気仙沼の方々と知り合うきっかけで、関わるきっかけがあって、そこから13年間、福島を中心として僕自身が足を運ぶ中で、文字で伝わる今の福島の状況だったり、東北の状況と、自分自身が世代のさまざま、年齢もさまざま、やってることもさまざまな人たちっていうのと関わる度に乖離したものがあるなと思った。あくまで自分の個人的な視座ですけど」と明かす。その上で「彼らの声だったり、本音だったり、信念だったり、そういうものを映画という残る文化で可視化できたらいいなと思った」と熱い思いを口にした。 12日で福島県相馬市と南相馬市で撮影された。朝早くから夜遅くまで撮休がないほどのハードなスケジュールだった。小林監督は「初日が、朝早いっていうことで、前日にスタッフ、キャストで前泊していたんです。その時に相馬の居酒屋さんで、瀧さんとご飯食べて『あしたの朝に備えましょうか』みたいな話をしてたんです。その時に、何のきっかけかわからないんすけど、瀧さんが『アウトレイジ』の(北野)武さんの話をされて。たけしさんは、テストもほぼやらないし、本番も1発でオッケー出すみたいなこと言われて。撮影入ってから『もう1回』って言いづらくなっちゃって」とボヤく。「今後、新人監督と組む時は、そういうことは言わない方がいいんじゃないかと思いました」と小林監督が恨み言を言うと、瀧は「こっちの勝ち、ということで」と丁々発止のやり取りで笑わせた。 最後に小林監督は「僕がこの企画をした2011年は、震災からの年からなんです。決して寛容ではない社会の中で、僕たちは生きているとずっと思っていて。正しさみたいなことが求められながら、正しさなんて本当はないのに、と思いながらなんか。そんなことを映画の中で描きたいなというのが大きかったです。当事者の選択、関わってる人の選択にどう寄り添うかっていうことを、問題提起として、この映画の中で描ければいいなと思って作りました。受け取りやすい映画ではないですし、何かを提示して描ける題材ではない。ただ、感じてもらうには十分な映画と自分の中で納得のいく映画ができたと思っております」と力強く語る。「いろんな声があって、いろんな文字がある。どういう声に耳を傾けて、どういう選択をしていくかっていうことを、考えるきっかけになってもらえればなと思っております」と呼びかけていた。 3月1日からテアトル新宿、UPLINK吉祥寺、関西では3月8日からシネ・リーブル梅田、UPLINK京都、3月9日から元町映画館、名古屋は3月23日にシネマスコーレで上映。ほか全国で順次公開する。 舞台あいさつには、栗林藍希、足立智充、内田慈も参加した。