続く余震「車中泊」の悲劇どう対応? 熊本地震の教訓「7つの備え」(下)
【7】「ごみ」も大事に「廃棄物」は減らす
最後に被災地の「ごみ」の問題にも触れます。災害に見舞われると、倒壊した家屋の一部や屋内の片付けで大量の「ごみ」が出され、道路わきにうずたかく積まれることになります。熊本市では地震の影響で焼却炉が停止して収集が遅れるなど、混乱や困惑に拍車がかかっていました。 時間がたつほどに崩れたり、においがきつくなる「ごみ」は一刻も早く処理してほしいと思うもの。しかし、多くの被災地では慌てて捨ててしまった「ごみ」が、実は後から考えると捨てなくてよいものであったり、大事な思い出の品であったりしたと後悔の声が上がります。片付けに急ぐボランティアから「このごみをどうしますか?」「このがれきは?」と聞かれ、傷ついた被災者も少なくないようです。東北では「好きでごみにしているわけじゃない」という被災者の叫びを聞きました。互いに心の余裕を持って向き合いましょう。 しかし、広義の「災害廃棄物」の処理が一大事であるのは間違いありません。東日本大震災では津波や原発事故の影響もあって、その処理は困難を極めました。迅速な対応を主導できない環境省には批判が集中、自治体による処理能力や手際の差も浮き彫りになり、復興のスピードにも影響が出ました。 今回はそのときの反省から、環境省が支援チームをつくって仮置き場の確保や広域的処理の調整をしつつ、「搬入時から分別が重要」「関係のない廃棄物の持ち込み防止を」などのメッセージを発信しています。それでも、現場の長期戦は必至でしょう。「廃棄物はできるだけ発生を抑える」というごみ問題の大原則にも立ち、行政と業者、住民が一体となったスムーズな処理が望まれます。 首都直下地震では東日本の約5倍の最大1.1億トン、南海トラフ巨大地震では約16倍の最大3.2億トンの災害廃棄物が発生すると試算されています。熊本・大分の皆さんの一日も早い生活再建と街の復興を願いつつ、私自身も含め一人ひとりが足元を見つめ直し、備えていかなければなりません。 以上、他にもさまざまなテーマはありますが、私の熊本での実体験をベースに現時点でまとめられる課題、教訓でした。
----------------------------------- ■関口威人(せきぐち・たけと) 1973年、横浜市生まれ。中日新聞記者を経て2008年からフリー。環境や防災、地方自治などのテーマで雑誌やウェブに寄稿、名古屋で環境専門フリーペーパー「Risa(リサ)」の編集長も務める。本サイトでは「Newzdrive」の屋号で執筆